2016年06月12日
秋葉原(というか御茶ノ水)で開催されたアナログオーディオフェア2016 に行って、先ほど帰ってきました。
いつものごとく出足が遅れて会場には昼過ぎに着いたのですが、今年は去年に比べてフロア数で2倍の広さになったためか、大幅に出展社が増えたにもかかわらずひどい混雑は少なく、比較的ゆっくりと見たり、聴いたり、訊いたりすることが出来ました。
但しそれは今日の午後だったからだったらしく、昨日、土曜日はまだ非公式な数ながら今日の1.5倍以上の入場者があったようで、かなり混雑したそうです。
いつもは大体一番上の階から見ていくことが多いのですが、今回は何となく一番下2階からスタート。
この会場は広いホールに小さな出展社が露天市のように集まっていて、個人規模のメーカーが大多数なだけに個性的なところが多く、個人的にも関心の高い会場です。
ゾノトーン(前園サウンドラボ),グランツ(ハマダ電気)、ベルドリーム(フェア主宰)はいつもお馴染み。
ロッキーインターナショナルに高級そうな黒いターンテーブルが置いてありましたので、「だいぶ前にアナウンスのあったAcoustic Signatureのプレーヤーはどうなりましたか?」と訊くと、最近発売を開始したそうで(5月2日)、まだWebサイトサイトは準備中とのこと。でもひと通り5,6機種の国内ラインナップがあり、30万円台から100万円超まで揃っています。展示してあったのはSTORM MK2 という高級機で価格は95万円也。
また単体トーンアームもあり、精度感のある9インチのTA-1000 (下から3番目)が22万円と比較的こなれた価格であるのは嬉しいところです。
またロッキーインターナショナルからは新規に米Soundsmith サウンドスミスのカートリッジが発売されることが決まったそうです。こちらも詳細が決まりましたらお知らせします。
国産真空管アンプの雄、ウエスギは後継者にバトンタッチ、代表であり設計者の藤原伸夫氏にお会いしました。すでに創業者のスピリットをしっかり受け継いで新たな一歩を確実に進めているのは周知のとおりですが、藤原氏も既に長い実績をもつヴェテラン・デザイナー、実は店主のかつての先輩社員にあたることもあり、個人的にも期待大なのです。
今後本格的に扱いをしてまいりますので、新生ウエスギ・アンプもよろしくお願い致します。
MASTAZ マスタツ・オーディオプロジェクトはかねてから注目していた新しいブランド。工業デザイナーである増田泰彦氏が主宰するオーディオラックを中心としたメーカーです。
ラックの実物を初めて拝見しましたが、しっかりしたつくりでもちろんデザインも秀逸、使い易く、そして嬉しい価格。これも扱いを開始しましたので、追々ご紹介させて頂きます。
もうひとつ、ラック関係で、これも前から気になっていたものですが、margherita マルゲリータというデザイン・ファニチャーで、レコードやCDのためのラック,ボックス、本棚,書類・ファイル棚,引き出しからデスク,チェアーまで実に様々な製品を手掛けています。母体が建築設計事務所なのでデザインが優れているのもポイント。天井から床まで、壁面いっぱいに設置出来るレコード棚などもあり、レコード好きは一見の価値あり。
これも追々ご紹介していきます。
4階では、トライオードが大きめのブースを使って山崎氏のデモは相変わらずの盛況。
SPEC スペックも、私が部屋に入った時はアナログでなくデジタルでのデモでしたが、アンプをはじめとする同社の製品はもちろん、輸入販売するフィンランドのスピーカー、amphion アンフィオンが北欧の空気ともいうべき(実際に嗅いだことは無いですが)実に清々しいサウンドを聴かせてくれて、去年と同じく好印象。これはおススメのスピーカーです。
既に当店のNewsでもお伝えしましたが、光電カートリッジのDS Audioは満を持して最上級機、DS Master1(カートリッジと専用イコライザーアンプのセット)を初めて展示、デモしていました。
イコライザーアンプが大型プリメインアンプ並みに大きくなってしまったため、ツートンカラーにしてスマートに見せる工夫をしたなど、開発者から伺いました。
上がって一番上の5階では、ZYXのカートリッジでまずバッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータをオランダの奏者、テオ・オロフの演奏で、その後モノラルのR100-MONO に替えて、モノラル盤のヨッフムのオルフ「カルミナ・ブラーナ」(バイエルン放送響)とスイトナー&SKDのチャイコフスキー 弦楽セレナーデ、という大変凝った音源でのデモを楽しませてもらいました。生き生きして鮮度の高い音はZYX以外の何物でもありません。アンプはソネッティア,スピーカーはプロアックと、お馴染みの構成に加えて、独アマゾンの漆黒のターンテーブルが光っていました。
中央の大きな部屋にも注目のメーカーが集結しました。
まず国内のショウ初お目見えとなったアームとターンテーブルのReed。独創のターンテーブル3C と、近日輸入が開始される伊AUDIA オーディアのハイエンド・アンプで充実したサウンドを披露(スピーカーは同室の他社と共通でソナス・ファベールのAmati)。
他にもViV laboratory,Phasemation,Aurorasound,Audio Noteなどが入れ替わりながら多くの来場者を集めていました。
Air Tight(A&M)とMy Sonicはいつもタッグを組んでデモしています。
ターンテーブルはもちろんTransrotor。スピーカーは今回YG ACOUSTICS のCarmel 2 を使用、高槻工業製300Bを積んだシングル・パワーアンプ(近日発売予定)と組んでのデモは、音離れの良さが際立っていました。
ところがデモの途中、レコードをかけ替える際に、何の前触れもなくマイソニックの松平氏が機材のところへ行って、何やら同社のMCトランスのケーブル接続をいじり始めました。
デモ中のA&M須田氏も打合せ外のことに「何をされたんですか?」と何だか訳が分からないといった面持ちで問いかけますが、松平氏のほうはそれには答えず、いたずらっ子のようにニヤリとして、音も出さずにレコードをかけ続けています。音を出そうとする須田氏を制止して、「音はまだ。少し熟成させましょう」(??) かけていたLPが竹内まりあの「ウィスキーはお好きでしょ」だったのに引っ掛けての発言です。
無音で針が載ってレコードだけが回るなか、一同?? 1分強ほど経ったでしょうか、「さて音はバーボン、それともスコッチになりましたでしょうか?」と松平氏、同じ曲を音量を変えずにそのまま再生しました。機材は全く同じなので変わるはずもないのですが、おや?不思議や不思議、少し変わったかな、ときどきちょっときつめになるかなとの感もあったのが、輪郭が少しスッキリして見通しの良い、よりストレスの無い音に聞こえます。よく聴いてみると、いや、結構変化しているようにも聞こえます。
まだいたずらっぽくニコニコしている松平氏、さて、種明かしです。実は手の中に手製のショート・プラグを2個隠し持っていて、アームケーブルの出力のところで左右それぞれ+-をショートし、そのままある時間再生することで、音声信号によるカートリッジの自己消磁をしていたのです。ああ、なるほどね、という方も多いと思いますが、オーロラサウンドなど、同じ方法で消磁する機能をもつフォノイコも存在します。
松平氏が海外のショウで出展者にこの小技を教えると、彼らがデモの際に実践、とてもウケるので喜ばれるのだそうです。向こうではゴッドハンドの松平と呼ばれるとか。
何だか面白い理科の先生の授業を聞いたようで、こちらも思わずにっこり、とても有用なワンポイント・アドヴァイスのひと時でした。
週に一回くらいやるといいそうですので、皆さんもぜひお試しあれ。これはMC昇圧トランスの出力でも同じように有効で、トランスの消磁に役立ちます。但しアクティブな機器、例えばフォノイコではダメ、回路を破損してしまいますのでご注意。