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店主日誌
「音のサロン&カンファレンス」に行ってきました
2016年11月08日
 

 
先月末になりますが、JAS(日本オーディオ協会)主催の「音のサロン&カンファレンス」という催しに行ってきました。
 
レコード針のJICO さんから出展の知らせが届いて、この展示会については初めて知りました。
今回限定的に秋葉原駅近くの富士ソフト・アキハバラプラザ(なかなかきれいで立派なビルです)で開催され、40社強の各部屋での展示・試聴と、いくつものカンファレンス(ここでは講演・セミナーといった意味)から成っています。
テーマのはっきりした講演会が並んでいるのが特徴ですが、ブースを使ったメーカー展示は2フロアー分を使い、規模としては少し前のアナログオーディオフェアくらいでしょうか。
 
それにしてもこのところ、比較的こじんまりとしたオーディオ展示会が林立して、それぞれ皆少しずつ違ったメーカーが出るので面白いのは確かですが、週末に何回も同じような所へ足を運ばなくてはならず、少々億劫なのも確か。
それぞれの主催者がそれぞれの立場で開催しているのは分かるのですが、足を運ぶ客にとってはもう少し整理してまとめてくれないかな、という気持ちも。
いくつもの展示会に参加しているメーカーも少なくありませんので、それもまた大変ではと思います。

まあそれはさておき、今回は午前中に済ませなくてはならないこともあり、いつものようにまんべんなく見聴きして周るつもりはなくて、案内を頂いたJICO のブースを目当てに訪れました。
皆さんもよくご存じのJICO(日本精機宝石工業)は本社・工場は兵庫県にあり(営業基盤は大阪)、いつもはメールや電話でのやり取りでしたので、今回直接お話が出来るというのと、案内状に書かれていた新開発のMCカートリッジが初お目見えということで期待してブースに伺いました。

デモ担当は開発にあたった同社の前田氏。まず最近発売されたneo SAS 針から。
長らくJICO 独自開発の高性能針として販売されてきたSAS(Super Analogue Stylus)はカンチレバーの材質にボロンが使われていたため、昨今のボロン調達難により生産終了となっていました。
今年7月にボロンに代わりサファイアをカンチレバーに採用した待望の新製品、neo SAS が発売されたのはまだ記憶に新しいところですが、今回、そのヴァリエーションとして上級仕様となるルビー・カンチレバー・タイプも紹介されました。

但しあくまで交換針ですから、SHURE V15Ⅲ にオリジナル針,SASサファイア針,SASルビー針を付け替えながら、針による音質の差を聴くというJICO ならではの試聴方法です。かけたレコードはジュリー・ロンドンのヴォーカル。
さてその音は、予想以上に違いが感じられ、オリジナル針は音楽の大事な部分を抽出したような落ち着いた音質で、これはこれで流石の定評ある再生。
それに対してサファイアとルビーはだいぶ違って、ずっと音がクリアになり音数が増します。
基本的にサファイアとルビーは同じ傾向にありながらも、それぞれ若干異なり、サファイアが少し華やかな美音、ルビーは新鮮ながらそれよりは少し落ち着いて、しっとり感も出る、といった印象でした。

交換針といっても、針先チップはもちろん、カンチレバーとそれを支えるダンパー、それにMM型発電の要であるマグネットまでを含む振動系が搭載されているわけですから、これを替えるということは発電系の半分ほどを替えることになり、そのつくりが違うなら音が違って当然なのです。
とくにSAS は完全にJICO 独自の構成で、オリジナル針を復刻するという意図は元々ありません。オリジナルに沿った交換針はスタンダード・タイプとして別に用意されています。
SAS 針は以下の専用共通仕様をもちます:

1) S.A.S. チップ
2) サファイア(ルビー)・カンチレバー
3) One Point Tension Wire System
4) 特殊形状マグネット

つまり SHURE V15Ⅲ の30年以上前の針を、最新の技術で作られた高性能針に交換することで、現代のV15Ⅲへとアップデート出来るわけです。
個人的には少なくともこの時のレコードを聴いた限りでは、近々発売されるルビーカンチレバー・タイプかな?



次に聴かせて頂いたのは、現在鋭意製作中の新MCカートリッジ「白らべ」。
今までも普及価格帯のMMカートリッジは販売されていましたが、独自開発の本格派MC型としては初の製品となります。
黒子に徹してきた同社が、長年の実績を背景に、今の時期だからこそ発表を決めた渾身の一品です。
これについては別の欄(What's NEW? ニュース)で詳しくお伝えしますが、
http://www.maestrogarage.com/news-detail/365
試作とはいえ充実した音質に感心、また予価ではあるものの、88,000円という控えめな価格にも感動。
100個のみの限定生産で、何とか年末までには生産を上げたいとのことです。乞うご期待。

なお、最初に載せたJICO 文字の浮き出たパネルは、同社の数え切れないほどの交換針ラインナップを、実際の製品をひとつひとつ貼り込んでディスプレイしたもので、色とりどりな交換針のカラーがなかなかきれいなアートパネルとなっていました。
これは社長の仲川氏自身が業務終了後コツコツ仕上げた苦心の作、とのことです。
ゆくゆくは販売されるとか(!)