2017年12月07日
日本フィルハーモニー交響楽団の公開リハーサルを観に行ってきました。
日フィルの本拠地(公演と練習を行うホームグラウンド)は、我が地元の誇る杉並公会堂。当店から歩いて10分ほどのところにあります。
日フィルは1994年から杉並区と提携して様々な活動を行っていますが、杉並区の文化事業として本番前の実際の練習を公開する公開リハーサルを実施しています。
いつか見たいと思っていたのですが、今回は休業日の木曜にあたったのでラッキーとばかリ行って参りました。
当日先着600名まで、無料です。
まあ、平日の午後1時からでは勤め人は無理、暇人でない限り行けないし、わざわざ練習を見に来る人なんてそんなにはいないだろう、などと高をくくって行ったのが間違い! 着いてみてビックリ、3列に並んだ行列がロビー内で一回折れてもうかなりの人数並んでいます。これでもだいぶ早めに来たのですが。
本日の指揮者は井上道義氏。今年で71歳になりますがエネルギッシュで全く歳を感じさせないどころか、益々自由闊達。
そんなところは今回の公演の選曲にも表れています;
ラヴェル/「マ・メール・ロワ」組曲
八村義夫/錯乱の論理
ベルリオーズ/幻想交響曲
この日のリハーサルでは上記から「錯乱の論理」と幻想交響曲の第4楽章「断頭台への行進」が取り上げられました。
練習開始時間前には楽員全員が出てきて各人真剣に音出し練習しているので、全体の音量たるや相当なもの、本番前にいつもやる、あのピッチ合わせとは比べ物にならない騒々しさです。
その後開始時間になり、井上さんが出てきて一言二言言ってからそのまま「錯乱の論理」を始めたら、おや?先ほど聞いていた練習音と同じように聞こえるではありませんか(失礼!)。
まあ、これは素人の大雑把な感覚ですから、もちろんちゃんと聞く耳を持った方が聴けば分かるのでしょうが、題名が題名ですから、敢えて混乱したようになっているところもあるのかもしれません。
全曲を通して演奏(と言っても8分ほど)した後、指揮者が気の付いたポイントをいくつか繰り返し練習していくと、同じところを演奏しても、おや?さっきより分かり易いように感じます。
最初に弾いたのはまずとにかく音出し程度、慣らし運転みたいなもので、指揮者が与えるちょっとしたヒントに皆の意識が収斂していき、次第にピントが合って、私のような聴衆にも分かり易くなったように聴こえる、そんな感じです。
最初の通しが終わった時、井上さんが客席に振り返って「錯乱した?!」と問い掛けましたが、決して錯乱したようには聞こえませんでした。ただ所謂正真の「ゲンダイオンガク」ですから、よく分かったか、というとそれはノー。
この後休憩に入りましたが、その間井上さん、私たちに向かってマイクを持ってワンポイント解説もしてくれました。
井上さんは桐朋学園在学中に八村さんにも習ったそうですが、彼は「変わった人」だったとか。
休憩後は、ベルリオーズ。
これもまず一回通して弾いてから、いくつかポイントを押さえていきます。でも楽譜の細かい点を挙げて整えていくというよりは、もっと主観的,感覚的な指示によって音楽の表現を完成させていくといったやり方です。
例えば、始まってすぐ、ティンパニと金管の掛け合いの後大きな爆発があって、弦楽合奏が引きずるように弾くところがありますが、ここは、
「首切り台に元気に上がっては行かないでしょう、ここは嫌々行きたくない、上がりたくないといった気分で」
と言ってそれを身振りでも示します。そんな感じで楽員とやり取りしながら和やかに進んでいきます。
井上流のリハーサルをほんのさわりですが垣間見られて、ちょうど1時間得難い体験をさせて頂きました。
また是非参加してみたいと思います。