2019年12月15日
私どものお客様でたまたま近くにお住まいのおふたりを、それぞれのご自宅に案内してお互いのオーディオシステムを聴く会、というのを行いました。もちろん店主も同席して一緒に楽しませてもらっています。
既に先日、まず一方の方のところへお邪魔して実施したので、今回はホストが入れ替わっての2回目となります。
ところでこのお二方、K様とW様、共通するのは音楽への深い愛、というくらいで他は実に対照的。
K氏はヴェテランのオーディオマニアで、趣味としてはオーディオのほうに重心があり、W氏は明らかに音楽ファン、その音楽を出来る限り良い音で聴きたいがためにオーディオも追及している、という具合でアプローチは真逆。
聴く音楽ジャンルも、K氏は演歌,ロック,ジャズからクラシックまで、気持ちいい音で聴ける音楽なら何でもOKであるのに対し、W氏はクラシック・オンリー。
オーディオの聴き方も、K氏は広大なリヴィングルームに小型スピーカーを設置、遠く離れた位置で比較的絞った音量で聴かれるのに対し、W氏は7畳ほどのスペースながら防音処理を施した専用オーディオルームに大きなフロアスタンディング・スピーカーを設置、完全なニアフィールドリスニングでフルオーケストラを実演さながらの音量で聴かれます。
こうも嗜好が違うと普通ならほとんどお互い相容れないという事態にもなるのですが、そこはおふたりとも常識人、かつ紳士であることが分かっていますので、私どもも安心してお互いをご紹介することが出来ました。
今日は店主がまず車でK氏のところへ伺って一緒にW氏宅へ向かう手はず。
K氏からはせっかくなら少し寄って最新の音を聴いていって、ということでしたので早めに伺いました。
AUDIENCE スピーカー
TRINNOV プロセッサー
聴かせて頂いたのは少し前にお納めした特徴的な小型スピーカー
AUDIENCE Model 1+1 V3 で、わずか7cm ほどのフルレンジドライバーがフロントとリア―に1個ずつ(各側面にはパッシブラジエーターがそれぞれ1個ずつ計2個)着いた構成です。
これをただドライブするのではなく、その少し前に導入した
TRINNOV のプロセッサーST2 HiFi を併用して鳴らすというもの。
常人からするとトリノフを使うならもっと大きな普通のスピーカーに、などと考えてしまいますが、この方はメインスピーカ―にはMAGICO Q1 をお使いで、トリノフは同時にこちらにも接続してあります。それでも並行してシームレス(フルレンジ)な点音源を常に探求しておられ、現在試しているのがオーディエンスのスピーカーというわけです。
まずトリノフ無しで聴くと、予想していたより朗々と鳴り、少し細身ながらもヴォーカルはすっくと正面に立ち、声の質はまさにシームレス。フルレンジならでは。
次にトリノフを入れると最初の一音でその差が歴然! 不思議なくらいスピーカーの外側に音がパーッと拡がって、しかも見通しが良くなりました。
これが「トリノフ効果」で、単にグライコではなく高度な位相補正を行っている証拠です。
今は曲によってはオーディエンスで聴くことのほうが多い(!?)そうですが、お仕事でほとんど時間が取れないなか、短期間に部屋を含めてトリノフによる補正をすっかり手中にされているのには感服致しました。お納めしたその場で試してみた補正効果とは雲泥の差です。
さていよいよK氏と一緒にW氏宅へ向かいます。車で10分足らず。
ご挨拶もそこそこに早速2階のリスニングルームへ。中央のゲスト用シート以外にもちゃんと2席用意して下さいました。
さっきは遠くに小さなスピーカーが見えていたのとは対照的、今度はイタリア
Franco Serbrin の
KTEMA クテマ、眼前に大きな縦長のスピーカーが置かれています。
これをドライブするのは同じくイタリアのメーカー
Audia オーディアのプリアンプ
FLS1 とパワーアンプ
FLS4。
Franco Serbrin KTEMA
Audia FLA1 & FLS4
まずはウェルカム前奏曲ということで、ワーグナーの「ニュルンベルクの名歌手」前奏曲。
K氏は本当はレコードも聴きたかったのですが、残念ながらW氏はレコードからは完全に足を洗って(?)いて、現在の音源はCDのみ。K氏には事前にお話ししていたので多くのCDを持参下さって、中からK氏の「音のリファレンス」となっているジャズと演歌のCDをじっくり聴かせて頂きました。
演歌を本格的なシステムで聴く機会は多くないですが、一流の録音・制作によることもあり、なるほど、声の伝わり方が尋常でなく、実際に会場に居て生を聴いているような感覚に襲われます。
「われわれ日本人の聴覚にとって、システムの音の判断という目的ではこうした日本語の歌がとても分かり易いのです。」というK氏の言葉は説得力があります。
ジャズもいくつも聴きましたが、最近の好録音、寺島レコードの大橋裕子トリオ盤は元々この録音が少々低音過多なのが災いして低域が膨らみ過ぎ、このスピーカーの一筋縄ではいかない難しさを改めて教えてくれました。同じジャズでも、かつてのレコード全盛期の盤では大変バランス良く鳴り、クテマがクラシック音楽系専用などといった狭量なスピーカーではなく、高度な音楽性を身につけていることが分かります。
その証拠に、最後の方で聴いたピンク・フロイドは最高の快感! そういえばクテマの制作者、フランコ・セルブリンはロックも大好き、と聞いた覚えがあります。
最後はレスピーギの「ローマの松」から古のローマ軍がアッピア街道を凱旋行進する圧巻の場面をフルヴォリュームで(シノーポリ指揮ニューヨーク・フィル)。 これは爽快!
あっという間に数時間が経ち、気が付くと外は真っ暗に。
お二人ともこのたびは有難うございました。また機会がありましたらいつでも声をお掛け下さい。