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ホーム店主日誌2017年12月
2017年12月
店主日誌:3
2017年12月25日
 
 
 
皆さんのなかにはクリスマスに合わせてそれに相応しい音楽を聴いていらっしゃる方も多いと思います。 え?忘年会続きでそんな暇はない??

店主もクリスマス・イヴには毎年違った演奏のレコードでチャイコフスキーの「くるみ割り人形」を聴くのを恒例としています。
今年は有名な演奏、カラヤン&ベルリン・フィル(ドイツ・グラモフォン、1966年録音)で組曲版を聴きました。
裏には(実はこちらが第1面ですが)同じ作曲家の「弦楽セレナード」が収められていますので、これは明日聴く予定です。

さらに今年は何日か前から、バッハの「クリスマス・オラトリオ」(3枚組、DECCA/LONDON、1966年録音)を半面ずつ、久々に全曲を聴きました。演奏はカール・ミュンヒンガー指揮するシュトゥットガルト室内管弦楽団&リューベック・カントライ、そしてソリスト達。
元々この曲は6つのカンタータをまとめたような形態で、レコードの片面ずつ、すなわち1曲ずつ聴いてもぶつ切りの違和感は無いのです。
彼の受難曲などとは違って、いかにもキリストの降誕を祝う祝典的な気分に溢れ、流石は名作、申し分ない演奏&録音もあって飽きることがありませんでした。

さて、この後大みそかまでには「第9」を、毎年違った演奏で聴くのも恒例としていますが、今年はカール・シューリヒトの振った録音をかける予定です。
2017年12月07日
 
日本フィルハーモニー交響楽団の公開リハーサルを観に行ってきました。

日フィルの本拠地(公演と練習を行うホームグラウンド)は、我が地元の誇る杉並公会堂。当店から歩いて10分ほどのところにあります。

日フィルは1994年から杉並区と提携して様々な活動を行っていますが、杉並区の文化事業として本番前の実際の練習を公開する公開リハーサルを実施しています。
いつか見たいと思っていたのですが、今回は休業日の木曜にあたったのでラッキーとばかリ行って参りました。
当日先着600名まで、無料です。

まあ、平日の午後1時からでは勤め人は無理、暇人でない限り行けないし、わざわざ練習を見に来る人なんてそんなにはいないだろう、などと高をくくって行ったのが間違い! 着いてみてビックリ、3列に並んだ行列がロビー内で一回折れてもうかなりの人数並んでいます。これでもだいぶ早めに来たのですが。

本日の指揮者は井上道義氏。今年で71歳になりますがエネルギッシュで全く歳を感じさせないどころか、益々自由闊達。
そんなところは今回の公演の選曲にも表れています;

ラヴェル/「マ・メール・ロワ」組曲
八村義夫/錯乱の論理
​ベルリオーズ/幻想交響曲

この日のリハーサルでは上記から「錯乱の論理」と幻想交響曲の第4楽章「断頭台への行進」が取り上げられました。

練習開始時間前には楽員全員が出てきて各人真剣に音出し練習しているので、全体の音量たるや相当なもの、本番前にいつもやる、あのピッチ合わせとは比べ物にならない騒々しさです。
その後開始時間になり、井上さんが出てきて一言二言言ってからそのまま「錯乱の論理」を始めたら、おや?先ほど聞いていた練習音と同じように聞こえるではありませんか(失礼!)。
まあ、これは素人の大雑把な感覚ですから、もちろんちゃんと聞く耳を持った方が聴けば分かるのでしょうが、題名が題名ですから、敢えて混乱したようになっているところもあるのかもしれません。
全曲を通して演奏(と言っても8分ほど)した後、指揮者が気の付いたポイントをいくつか繰り返し練習していくと、同じところを演奏しても、おや?さっきより分かり易いように感じます。
最初に弾いたのはまずとにかく音出し程度、慣らし運転みたいなもので、指揮者が与えるちょっとしたヒントに皆の意識が収斂していき、次第にピントが合って、私のような聴衆にも分かり易くなったように聴こえる、そんな感じです。

最初の通しが終わった時、井上さんが客席に振り返って「錯乱した?!」と問い掛けましたが、決して錯乱したようには聞こえませんでした。ただ所謂正真の「ゲンダイオンガク」ですから、よく分かったか、というとそれはノー。
この後休憩に入りましたが、その間井上さん、私たちに向かってマイクを持ってワンポイント解説もしてくれました。
井上さんは桐朋学園在学中に八村さんにも習ったそうですが、彼は「変わった人」だったとか。

休憩後は、ベルリオーズ。
これもまず一回通して弾いてから、いくつかポイントを押さえていきます。でも楽譜の細かい点を挙げて整えていくというよりは、もっと主観的,感覚的な指示によって音楽の表現を完成させていくといったやり方です。
例えば、始まってすぐ、ティンパニと金管の掛け合いの後大きな爆発があって、弦楽合奏が引きずるように弾くところがありますが、ここは、
「首切り台に元気に上がっては行かないでしょう、ここは嫌々行きたくない、上がりたくないといった気分で」
と言ってそれを身振りでも示します。そんな感じで楽員とやり取りしながら和やかに進んでいきます。
井上流のリハーサルをほんのさわりですが垣間見られて、ちょうど1時間得難い体験をさせて頂きました。

また是非参加してみたいと思います。
2017年12月01日
 



SOULNOTE ブランドを擁する(株)CSR 社にお邪魔してきました。
本社は神奈川県 相模大野にあります。これで2度目となりますが、今回は小田急線で向かいました。

お目当ては新しく発売となったフォノイコライザー・アンプ、E-2。同社の試聴室で聴かせて頂きます。
ご挨拶もそこそこに、着くとそのまま2階の試聴室(兼、音質検討室)へ。

ありました、ドーンと大型プリメインアンプと見紛うばかりのフォノイコ、E-2。威風堂々、これだけ立派なフォノイコはそうはありません。50万円の高級機ではありますが、それ以上の風格があります。重さも20kg あります。
設計者の加藤氏から細部についての説明や開発秘話などを伺い、いざ試聴開始。
因みに使用カートリッジはまず、お馴染みDENON DL-103、スピーカーはCSRが輸入する英PMC のMB2-SE。

聴かせて頂いたレコードは以下のとおり;

エヴァ・キャシディ/NIGHT BIRD
曲:AIN’T NO SUNSHINE

ビル・アヴァンス・トリオ/SUNDAY AT THE VILLAGE VANGUARD
曲:ALICE IN WONDERLAND

ブライアン・ブロンバーグ/WOOD
曲:COME TOGETHER

ラドカ・トネフ/FAIRYTALES
曲:THA MOON IS A HARSH MISTRESS

カール・ミュンヒンガー指揮 シュトゥットガルト室内管弦楽団
曲:ヴィヴァルディ「四季」~秋

小澤征爾指揮 パリ管弦楽団
曲:ストラヴィンスキー「火の鳥」~魔王カスチェイの凶悪な踊り

始めの3枚は加藤氏のお気に入り盤。
いずれもスカッと胸のすく音楽・録音で、設計者の意図が端的に理解出来る内容です。
とくに最初の2枚はライヴ収録なので、会場の雰囲気,空気感の再現が見事。

後半の3枚は営業・山神氏の盤。とくにノルウェイのヴォーカル、ラドカ・トネフは海外で調達した氏秘蔵の一枚ということで、初めて聴きましたが透明感ある少しひんやりした音色はいかにも北欧産。美しいジャケットもナイスで、このレコード欲しくなりました。

何のストレスもなくスピーカーから流れ出てくる音の奔流は、ソウルノート以外の何物でもありません。

実は今回、発売直前の新インテグレーテッド・アンプ A-2 (最終試作品)を組み合わせて聴かせて頂いたので、フォノイコE-2 だけではなく、このA-2 の功績も大きかったに違いありません。

クラシックもお願いします、とリクエストしたのに応じて取り出したるは最後の2枚。
ミュンヒンガーの「四季」はステレオ最初期1958年の録音。あの有名なイ・ムジチの四季と同時期(ミュンヒンガーが1年早い)で、両盤は日本の四季ブームの火付け役でした。

今回の盤はキングレコードの最初期ステレオ盤で'62年の発売。貴重なブルーバック・ジャケットです。
この頃は英DECCA が日本国内でのカッティング,マスタリングを許さず、英本国から直接送られたメタルマスターを使ってプレスされましたから、ビニールの材料以外は英国オリジナルと同等のプレスと言うことが出来ます。

かけてみると60年前の録音とは思えない生々しい音が飛び出してきましたが、少々高域寄りのバランスか? それならちょうど良いサンプルだから、試しにRIAA以外のイコライジング・カーヴを試してみましょう、ということになりました。

E-2 はフロントパネルの3つのノブで、Roll Off(高域減衰周波数)6種類,Turn Over(低域増幅周波数)4種類,Low Limit(超低域増幅制限)6種類をそれぞれを独立して変更出来るので、組み合わせでは何と144種類ものカーヴを作り出すことが出来るのです。
取説には3ページにわたり各レコードレーベルに対応したカーヴの適合表がありますので、これに従って3つのノブを所定の位置に合わせることで希望のカーヴ特性が得られます。

今回は試しにLONDON(DECCA の米国向けレーベル)の「LP」カーヴを試してみたところ、すっきり生々しくも聴き心地の自然なバランスとなりました、
このカーヴが合っているかは別にして、こうして自分の気に入ったカーヴで聴いてみるのもE-2 ならではの楽しみ方です。

小澤&パリ管の「火の鳥」は1972年のステレオ録音で国内プレス盤(ANGELレーベル)ですから、これは間違いなくRIAAカーヴ。パリ、サル・ワグラムの大きな(?)空間の感じられる録音を、大音量の箇所でも全く崩れることなく余裕をもって、フランスのオケらしいシャッキリとして鮮やかな音色で聴くことが出来ました。

以上は、先ほど申しましたようにDENON DL-103 で聴いているのですが、これが本当にDL-103?というくらいの再現です。

でもやはり上はありました。
E-2 のもう一つ大きな特徴が今話題のDS Audio の光電カートリッジを接続出来ることです。メーカーを超えた適合はこれが業界初の快挙です。
実はSOULNOTE とDS Audio、両者は同じ神奈川県の相模原市にあり、カートリッジは自転車で持って来てくれるそうです。カートリッジの出前なんて、世界でもここぐらい? 良い関係ですね。

さてカートリッジをDS Audio のDS002 に付け替えると、当然ながらさらに鮮やかで切れ込みもよく鮮明、光電カートリッジの特徴である低域の揺るぎなさ、などあらゆる点でハイスペックを感じるサウンドに深化しました。
でもこれ見よがしにHi-Fiをひけらかすことなく、演奏時の空気感,気配まで感じ取れる再現には敬服しました。
まさにカートリッジとフォノイコの目指すところが一致しているという印象です。E-2 を手に入れたなら光電カートリッジを組まないのは勿体ないな、と感じた次第。

ただ、光電カートリッジとの組み合わせではRIAAカーヴのみの再生となりますから、例えばモノラルとステレオ初期の盤では通常のMC,MMカートリッジを用いて場合によってイコライジングカーヴを調整、ステレオ安定期~現在の盤には光電カートリッジを使う、といった贅沢も良いのではないでしょうか。

とにかくレコード再生の可能性を積極的に追及する使い手にとって、これほど魅力的なフォノイコは、そうはありません。

それと先述のように新しいインテグレーテッドアンプA-2 がまた素晴らしいのは間違いないようで、これについてはさらに試してみたいと思います。

今後もSOULNOTE の上級シリーズから目が離せそうもありません。

帰りは山神氏のお奨め、「プラス410 円でロマンスカーに乗れますよ」に従って、町田⇒新宿間ではありますが、指定席にゆったり座って久方ぶりにロマンスカーの旅(?)をほんのひと時楽しむことが出来ました。

導入検討の方、試聴の手配も致しますのでご一報下さい。