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折に触れての1枚 Occasional Listening(12)~「悪魔のトリル」

2018年02月16日

 
悪魔のトリル」という曲名は皆さん聞いたことがおありでしょう。
17世紀イタリアのヴァイオリニスト,作曲家、ジュゼッペ・タルティーニの作曲したヴァイオリン・ソナタの通称です。

私も学生の頃廉価盤で買った「バロック音楽名曲集」の中に収録されていたこの曲を聴いて、その謎めいた題名と、それにまつわるエピソードが強く印象に残っていました。それはこんな具合です;

「1713年のある夜、タルティーニは夢の中で悪魔と契約を結んだ。
悪魔にどんな音楽が出来るのか、彼は試してみようとヴァイオリンを渡すと、驚いたことに悪魔は実に見事に美しいソロを弾いてみせた。
感動のうちに目覚めた彼は、興奮冷めやらぬうちに聴いたばかりの悪魔の曲を何とかそれに近い形で五線紙に書き留め、『悪魔のソナタ』と名付けた。」

真偽のほどはともかく、聴いてみると確かにその名に相応しく、とりつかれたような狂おしいトリルを伴う旋律が、一度聴いたら耳から離れません。

タルティーニ(1692-1770、伊)は若い頃はフェンシングに打ち込んだり、駆け落ちをしたりと結構奔放な生活を送っていたようですが、後年はヴァイオリンの腕を磨き、国内はもとより国外でも自他ともに認める巨匠として広く知られ、ナルディーニをはじめとする多くの弟子を育てました。

「悪魔のトリル」はヴァイオリンとバッソ・コンティヌオ(通奏低音)のための3楽章から成るソナタで、題名のトリルは終楽章で登場します。

このアルバムでヴァイオリンを弾いているのはロベルト・ミケルッチ(1922-2010、伊)、イ・ムジチ合奏団のコンサートマスターを1967~72年の間務めたことで知られます。ソロの録音は珍しいですが、ここでは自国の大先達へのオマージュを込めて、この作曲家の真髄を聴かせてくれます。

流石はイタリア人、旋律美に溢れているのはヴィヴァルディとも共通しますが、もっと陰りを帯びてしっとりとした魅力にあふれた曲集となっています。


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