from LITHUANIA
Reed リード社は'07年創業、リトアニア共和国のアナログ・プレーヤー専門メーカー。
創業者であるVidmantas Triukas ヴィドマンタス・トゥリウカス氏が設計も中心となって行っています。
ターンテーブルの処女作であり今もトップモデルであるMuse 3C は、新しい視点による独自の発想で開発に臨み、まず何といっても最大の特徴は駆動方式をベルトとフリクション・ドライヴとで切り替えて選択出来る点。とくにフリクション・ドライヴは現在他にほとんど例がありません。
ラバー製の滑車でプラッターの内側を駆動するアイドラー・ドライヴは、かつてのGarrard やThorens が有名で、現在でも愛用者の多いのは周知のとおり。
ガラードはアイドラー・ホイールをモータープーリーで回して(トーレンスはさらにベルトを介して)、プラッターのリム(円周の側面)の内側を駆動します。そのためリム・ドライヴとも呼ばれます。
それに対してMuse 3C は、モーターの軸にアイドラーと同様の形状をしたフリクション・ホイールが着いていて、直接サブプラッターを駆動します。その間に遊び車、アイドラーはありません。
従って何となく通例でアイドラー・ドライヴと呼ばれることもありますが、厳密にはReed ターンテーブルはアイドラー・ドライヴとは呼べず、メーカーでもフリクション(摩擦)・ドライヴと称しています。
同じようにプラッターの縁、リムも駆動していませんので、リム・ドライヴと呼ぶのも正しくありません。
アイドラーを介して駆動するのも、リム部を駆動するのも、かつてのヴィンテージ機の味わいとしては良いかもしれませんが、現代のターンテーブルを設計するに当たっては不安定要素として当初から想定外であったのです。
Muse 3C では、シャフトに直にフリクション・ロ-ラーを着けたDCモーターを2基用意し、センタースピンドルを中心に対角線に配置、サブプラッターを挟むようにして駆動します。
これによりプラッタースピンドルを片側から押すことなく、両側からバランスよく、かつロス無く強力に駆動することが出来ます。
しかも両方のフリクション・ローラーは微妙に径を変えてあり(従って2つのモーターの回転数もそれに合わせて微妙に変えてある)、双方の微振動が相乗的に増加することを防いでいます。
重量のあるモーターハウジングはローラーと同じシリコンラバーと思われる緩衝材(オレンジ色の部分)を介して支持フレームから完全にアイソレートされています。
2つのフリクション・ローラーは駆動時には、電磁式ソレノイドにより最適な圧力でサブプラッターに接してドライヴされます。1つのソレノイドで両方のローラーに均等に力が加わる構造です。もちろん休止時にはローラーは離れて、ローラーの変形を気にすることはありません。
ベルトドライヴを選択する場合は、上記のフリクション・ローラーの代わりにベルト駆動用のプーリーを使います。サブプラッターを中心に介して、その対角線上の2つのプーリーにベルトをかけて駆動します。2つのプーリーによりバランスのとれた駆動が実現し、スピンドルのラジアルベアリングへの負担が軽減されるのはフリクション・ドライヴのときと同じです。
ドライヴ方式の変更は簡単で、ほんの数分で完了します。
回転監視用のストロボ表示もユニーク。
プラッター内側からLEDによるストロボライトを照射して(写真上)、それをプラッター円周部分側面に並んだ小穴を通して見ると、回転が合った時には緑色に光るドットが静止して見えるのです(写真下)。
これで見ると、回転の立ち上がりでは実に素早く安定・静止し、回転数変更でも、すっと新しい回転数に安定するのが一目瞭然で、そんなところからもツイン・フリクション・ドライヴの駆動力の高さがうかがえます。
プラッターもまた独自の複合構造を採ります。
上の写真のように下から見ると分かりますが、ステンレスと、黒い部分が高機能樹脂のPOM(ポリアセタール樹脂)製。高精度に組み上げられています。
とくに縁のリム部分は厚さ1.5mmのステンレスに無数のストロボ穴が穿たれているのですが、それとぴったり寸法の合う本体側も同じく1.5mm厚の円筒。その間のクリアランスが1mmあるかないか。
このクリアランスを保ったままで寸分のブレもなくプラッターが涼しい顔をして回る様は、その加工・組み上げ精度を考えると、まさにラボラトリーレベルといいってよいでしょう。
敢えてこのような構造としているところは、彼らの製品精度に対する自信の表れといえます。
Muse 3C は高精度の電子式水準器を備えています。
慣れると3点のフットの高さを調整して完璧な水平を確保出来ますが、ただ余りにも精度が高すぎて、拘り過ぎるといつまでも調整が終わりません(!?)
ダブルアーム仕様のアームベース構成
センタースピンドルの軸受にはリバーススラスト・ボールベアリングを使用。側面スタビリティの確保には低ノイズ・ポリマー・スライドベアリングを採用。
回転制御にはクオーツ発振によるPLL システムを採用。
電源モジュールにはBooster 社製低ノイズBOTW 電源を採用。
機械式・電子式保護回路搭載
実際のフリクション・ドライヴ機構の様子と、ドライヴ方式変更の様子は以下の動画をご覧下さい:
駆動方式: ベルト・ドライヴ、またはフリクション・ドライヴを選択可能
回転数: 33 1/3,45 (スイッチ切替え式)
モーター形式: ダブル・ドライブDCモーター
ワウ&フラッター: 0.05%
プラッター: ステンレス+POM
外形寸法/ 重量: W540×D420×H240/ 25kg