AIR TIGHT エアータイトは元ラックス(現ラックスマン)にいた三浦篤氏が、同じくラックスで設計を担当していた石黒まさみ氏と1986年に創業(A&M Limited)、真空管アンプ専業メーカーとして既に長い実績を誇り、世界的評価を確固たるものとしています。
当初から真空管アンプ一筋を目指していたので、真空管の「気密性」ということでブランド名はAIR TIGHT となりました。
2015年には新デザインチームによる開発がスタート、伝統のエアータイトに新風も吹き込み、さらに魅力的な新製品が続々生まれてきています。
Atsusi Miura, founder
日本国内の専用工場でハンドメイドにて生産されます
ATE-3011 は、エアータイトのリファレンス・クラスのフォノステージアンプ。当初から初めての機能も盛り込んだ高い目標を掲げ、3年余の開発期間をかけての発表となりました。
同社の持てる技術を余すことなく盛り込んだ最上級フォノステージとしての実力はもちろん、初めての機能として、このところ話題にもなっているイコライジングカーヴの可変機能を搭載、RIAA 以外のカーヴに設定して、初期盤をより相応しいイコライジング特性で聴くことが可能です。
では、詳しく見ていきましょう。
可変式のイコライザーカーヴ
フォノイコライザー回路には、低域(ターンオーバー)にNF 型と高域(ロールオフ)にCR 型を組み合わせた複合型を採用、同一イコライザー回路内での干渉を回避しています。
イコライジングカーヴは、ターンオーバーとロールオフ特性を各5ポジション搭載、その組み合わせで自由に設定することが出来ます。
標準的なRIAA カーヴ(ターンオーバー:RIAA、ロールオフ:RIAA に設定)を始め、その他の代表的なカーヴであるNAB,AES,FFRR、加えて78回転機械式吹込みSP 用のフラット・ポジションが選択出来ます。
RIAA,NAB,FFRR,AES,FLAT の設定
さらにこれらを組み合わせることで、CLUMBIA,TELDEC,RCA などのカーヴの設定が可能です。
COLUMBIA,TELDEC,RCA の設定
これらは一例で、2つのセレクターノブの組合せで自由に設定が出来ますので(FLAT 以外4×4=16通り、ご自身で最も合うと思われるカーヴでの再生をお楽しみ下さい。これもまた、アナログの醍醐味!
切り替えノブの触感も、精緻で軽快なクリック感に拘りました。
セレクターにはショーティングタイプを採用し、切り替え時のショックノイズを低減しています。
それぞれのノブの切替えに際しては、フロントパネル中央の大型LED 自照式表示部に文字表示が点灯します。
敢えて現在主流の液晶表示などを採らなかったところに、エアータイトらしい拘りが感じら、表示窓のアクリルパネルに厚みを持たせたうえで緩やかなアールを加えるなど、苦心の跡が見られます。実際、この表示窓は初期のプロトタイプでは少々未消化な部分を感じましたが、改良を重ねて洗練されたデザインに落ち着きました。視認性も良好です。
独創の内部設計と吟味されたパーツ
増幅部をユニット化し、コンパクトなインナーシャーシ内にまとめ、さらにインナーシャーシをメインシャーシから吊り下げることで電気的(外来ノイズ対策)・機械的(振動対策)に最適な設計を実現しています。
これは好評の前作、ATC-5 プリアンプで初めて導入された筐体構造で、現在の設計チームの代表的な設計手法のひとつです。
ATE-3011 では、筐体中央に配したインナーシャーシ上に横置きに3本の双三極管12AX7 を設置し、インナーシャーシ内部、1.6mm 厚の銅板セパレーターを挟んで上下に1枚の基板にまとめた増幅回路を配置しました。
イコライザー回路のマイカコンデンサ,巨大なデカップリングコンデンサーを含む、要の回路すべてがここに収められています。
入出力系統の配線には音質の観点からシールド線を使わず、非磁性体のステンレス製のシールドパイプを各入力L/Rチャンネルごとに独立して使用しました。
電源部は漏洩磁束の観点から、十分な容量を確保したトロイダルトランスを2個用意して、デリケートな信号を扱う増幅部に悪影響を与えないように配慮しています。
ヒーター電源とB電源には独立した電源回路を採用。
また、ノイズやハムループの懸念から、MCカートリッジ用の昇圧トランスやヘッドアンプは敢えて内蔵していません(MMレベル入力のみ。昇圧トランスの併用を前提)。
通常、音質・信頼性のため、カップリング・コンデンサーにフィルムコンデンサーを用いることは一般的ですが、ATE-3011 ではデカップリング・コンデンサーにもフィルムコンデンサーを採用しています。
デカップリング・コンデンサーは増幅回路上、最適な位置に最適な容量のものを配置することが求められ、ステレオフォニックな音場再現性や左右チャンネルの音の統一感、残留ノイズといった、測定データをも左右する重要な要素です。
組み立て中のATE-3011 (中央の枠内がインナーシャーシ)
フォノ入力は3系統を用意
フォノ入力は3系統を用意し、フロントパネルの切替えノブで選択可能です。出力も2系統を装備。
店主おススメ!
入力: RCA×3
出力: RCA×2
周波数特性: 50〜20kHz (±0.2dB), 20Hz -2.5dB
全高調波歪率(THD): 0.02% (1kHz, 1V)
入力インピーダンス: 47kΩ
消費電力: 50VA
外形寸法/ 重量: W400×H151×D375mm/ 12.2kg