UESUGI 上杉研究所は、アンプ設計者でオーディオ評論家でもあった上杉佳郎氏が兄・上杉卓男氏とともに1971年に創業(型番のU-BROS は上杉兄弟の意)、一貫して真空管アンプを製造してきました。
2010年に惜しくも上杉佳郎氏が亡くなった後を受け継いで、現在の代表、藤原伸夫氏が2011年から運営しています。
両氏は長年親交があり、上杉氏が厚い信頼を寄せていた藤原氏に後を託して現在に至っています。
藤原伸夫氏は長年日本ビクターで電気回路設計を担ってきたヴェテラン中のヴェテランで、ビクターの伝説的名機、ラボラトリーシリーズのME1000 やPL-10,XL-Z1000A をはじめとして多くの製品設計に携わってきました。
こうした藤原氏の百戦錬磨の経歴は上杉時代とはまた違った新風をもたらして、ウエスギ・アンプの伝統を周到に守ったうえで、さらに視野を広げて新しい技術も導入、新時代のウエスギをしっかりと印象付けています。
U-BROS-220R のベースとなったU-BROS-220 は、1993年(!)の発売以来、長年好評を博してきたU-BROS-20 の後継機として開発されました。
デジタル技術の成熟,アナログ・レコードの復権といったアナログ新時代を見据え、徹底した音質・機能の見直しが行われました。
そして今回のリニューアルでは、大きなきっかけとなったのがDS Audio の光電カートリッジでした。
レコード愛好家である藤原氏が話題の光電カートリッジを試したところ、予想を超えた実力と可能性を感じ、アナログサウンドの特徴である瑞々しさや生命力を感じさせるその音はMM,MCと並ぶ発電形式になるものであると確信したといいます。これが自社のフォノアンプの新設計に繋がったのです。
構成としては従来のMM,MCに加えて光電カートリッジにも対応する共用型とし、既に好評を得ているU-BROS-220 のサウンドの源泉であった無帰還増幅段構成を変えることなく合理的に光電カートリッジ再生機能を盛り込んで、その恩恵もあって従来のMM,MC増幅回路の改善をも果たしています。
回路構成
MM/MC回路では、信号源のインピーダンス変動に対する高い安定度と優れた動特性の得られる無帰還CR型によるフォノアンプを採用、初段増幅ユニットは高電圧動作のSRPP(シャント・レギュレーテッド・プッシュプル)回路を用いて最大出力を増加、負荷となるRIAA イコライザー・ネットワーク回路のインピーダンスを高めています。結果、ドライブ負荷を軽減し、無帰還CR型フォノアンプとして最高クラスのダイナミックレンジ(最大許容入力)を得ています。
光電カートリッジに対しては、この無帰還増幅段を共用することで回路規模の増大を回避しながら合理的な回路構成を実現しています。
シャーシ・コンストラクション
L,Rチャンネル独立のシャーシー構造とし、独立電源にて電源を供給。
電源トランスには低磁束密度動作、低漏洩磁束のRコアトランスを新たに採用、防振ゴムを介してシャーシーに固定して振動の影響を受けやすいMC昇圧トランスへの振動の伝搬を軽減しています。
入力切替回路ならびにMCステップアップトランス部は、配線引き回しを最短とするため、入力端子直近に配置しています。
これによりS/N比やチャンネル・セパレーションの向上が図られています。
高性能バランス入力対応MC昇圧トランスを内蔵
低〜中インピーダンス型MCカートリッジに合わせて設計された大型 EI-35 パーマロイコアと極太巻き線による高効率のMC昇圧トランスを内蔵。
トランスの磁気シールド、保持方法は音質に影響を及ぼしますが、トランス・コアとの間に十分な空間距離を確保した多重シールドと、天然フェルトにより保持することで解決しています。
バランス入力にも対応
内蔵のMCトランスはバランス入力にも対応、1系統のバランス入力を設けました。
カートリッジ入力はMC/MM,光電カートリッジいずれにも対応する4系統を装備
4系統すべての入力がMM,MC,光電カートリッジすべてに対応しています。
ステレオ/モノラル切替えスイッチ,MUTE スイッチ装備
カートリッジ・セレクタースイッチのMUTE 位置では入力がショート状態となり、プリアンプの音量を絞ることなく針を下ろす際に生ずるショックノイズを防げます。
また、カートリッジの出力がショートされるこの状態でレコード再生することで、音質改善に有効な減磁効果が期待出来ます。
最盛期の高性能真空管を使用
ウエスギの宝ともいえる、真空管全盛期に当時の松下電器に特注した低雑音真空管 12AX7A を初段アンプに、フィリップスの軍規格 12AT7 を次段アンプならびに出力バッファーに使用し、高信頼性と共に真空管式フォノアンプの限界ともいえる入力換算雑音値-120dBV 以上(MM)を達成しています。
ウォルナット高級木製キャビネットの採用
木製キャビネットは、標準のウォルナット・オイル仕上げの他にオプションでチーク仕上げもご用意。
実績,信頼のある設計,生産手法の継承
1.6mm 厚亜鉛メッキ鋼板による高剛性シャーシーにより、無共振・無振動・無干渉構造を実現しています。
電源回路、信号増幅回路にはプリント基板による配線を行なわず、40年以上のキャリアのある職人による芸術的ともいえる手配線を創業以来貫いています。
店主おススメ!
使用真空管: 真空管式、CR型イコライザー
入力: RCA PIN×2, XLRバランス×1, 光電カートリッジ専用RCA PIN×1
出力: RCA PIN×1
入力感度: MM: 2.5mV、MC: 0.125mV、OPT: 22mV
定格出力: 300mV
SN比: MM: -120dBV 以上、MC: -145BV 以上
RIAAカーブ偏差: ±0.5dB 以内(20-20,000Hz)
入力インピーダンス: MM: 47kΩ、MC: 1Ω〜40Ω
出力インピーダンス: 1KΩ
消費電力: 22W
外形寸法/ 重量: W435×H146mm×D365/ 14kg