[CD-R盤]
ブルックナー/交響曲第4番 変ホ長調「ロマンティック」(ハース版)
セルジュ・チェリビダッケ指揮 ローマ・イタリア放送(RAI)交響楽団
チェリビダッケ/ローマ・イタリア放送響によるブルックナー。イタリア放送協会(国営放送、RAI)による聴衆を入れた放送スタジオ録音で、英国人コレクターからの提供音源。
比較的音質が良好であるため、エアチェックではなく放送局保管音源の良質なコピーと思われる。
一般にRAI の放送録音というと、音質は悪くないが残響が乏しくナローレンジで歪みが多く、オーケストラの録音には相性が悪い反面、声楽などには適した録音スタイルで、やはり歌の国の録音という印象がある。
但し当録音に限っては、エンジニアがマイクセッティングに配慮したのか、わずかだが残響があり、歪みも少なくフラットバランスの録音で、不完全ながら一応は安心して鑑賞出来るレベル。
ディスク化に当たっては、音質を損ねない範囲でヒスノイズ除去、周波数バランスがやや高域寄りだったためイコライジングによる若干の補正、ダイナミックレンジのわずかな拡大等々により改善を図った。
なお、RAI は1960年頃からステレオ録音を導入しているが、当録音には間に合わなかったようだ。また聴衆が入っているが、録音を前提とした招待客?であるためか会場ノイズはほぼ皆無。
1954年、当時ベルリン・フィル首席指揮者だったチェリビダッケは、終身指揮者フルトヴェングラー死去と後継カラヤンの就任により、首席指揮者の地位からほぼ「追放状態」で去ることとなった。その後は1972年に南ドイツ放送響(シュツットガルト放送響)首席客演指揮者に就任するまで常任ポストを持たず、ヨーロッパや南米各地のオーケストラに客演を続けた。なかでもRAI 所属の4つのオーケストラ(トリノ、ミラノ、ローマ、ナポリ)への客演は多く、当録音もその際のもの。
晩年のチェリビダッケはブルックナー演奏に定評があったが、現在残されている録音の大半は1970年代以降であり、1960年の当録音は、現在確認されているものの中では最古の部類に属する。
ちなみにチェリビダッケによる最も早いブルックナー演奏の記録は1946年の交響曲第7番(ベルリン・フィル)といわれており(交響曲第4番の初演奏は1959年スカラ座管か?)、1970年以前は第7番と第4番のみ取り上げている。
1971年以降、前記南ドイツ放送響への客演が増えるに従い、第4番と7番以外の交響曲がレパートリーに加わり、ブルックナー交響曲の演奏機会が急速に増えていったようだ。
晩年チェリビダッケは「顧みれば私の人生は「ブルックナーすること」でした」と語ったが、ブルックナーの演奏経験が豊富なドイツのオーケストラと密接な関係を持つことで(南ドイツ放送響はシューリヒトとしばしばブルックナーを演奏していた)、彼が理想とする演奏が可能と考えたのではないか。
当録音は、その「理想」には遠い時代、非ドイツ系のイタリアの団体との演奏記録ではあるものの、管楽器の音色がやや明るいことを除けば意外なほど違和感のない充実した演奏という印象がある。もちろん晩年のミュンヘン・フィルとの演奏に聴くような、極度に遅いテンポと精妙なアンサンブルによる円熟の境地に達した演奏とは異なるが、その反面、ブルックナーの演奏に不慣れで、しかも決して一流とはいえないオーケストラに対して、アンサンブルを適度に引き締めつつ巧みにリードしており、若干遅めのテンポ設定ながら(それでも晩年の演奏に比べればかなり速い)、個々の表現に良い意味での若々しさが感じられる。チェリビダッケは当時48歳、まだ壮年期だったのだ。
3月18日の演奏会は、恐らく前半にシューマンの交響曲第2番、休憩を挟んで後半にブルックナーというプログラム。冒頭に短い序曲などが演奏された可能性もある。当時のイタリアの聴衆にはなじみの薄い、かなり渋い曲目といえるが、営業的な収支を気にする必要がなく、幅広いレパートリーの紹介を使命とする公共放送局ならではのプログラム構成。チェリビダッケ自身の希望と放送局側方針との調整の結果、選択した曲目だったのだろう。
チェリビダッケによるブルックナー交響曲第4番の演奏機会は、ローマ・イタリア放送響との当録音後、1966年のスウェーデン放送響および南ドイツ放送響との公演まで空くことになり、チェリビダッケによる同曲初期の演奏例として貴重な存在といえる。
チェリビダッケはブルックナーの交響曲第4番を当ディスクの他に、1969年スウェーデン放送響,1973年南ドイツ放送響,1983年(3種?)・1988年・1989年(2種?)・1990年・1993年にそれぞれミュンヘン・フィルとライブ録音していた。
※総合カタログは下記を参照下さい:
https://www.ne.jp/asahi/classical/disc/index2.html
*【ご注意】
当商品はCD-R盤です。CD-Rは通常の音楽CDとは記録方法が異なり、直射日光が当たる場所、高温・多湿の場所で保管すると再生出来なくなる恐れがあります。
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レーベル: ORGANUM
品番: 110011AL
Stereo/Mono: Mono
録音: '60.3.18、ローマ・イタリア放送オーディトリアム、放送用ライヴ録音