ベートーヴェン/交響曲全集(全9曲)
交響曲第1番 ハ長調OP.21
交響曲第2番 ニ長調OP.36
交響曲第3番 変ホ長調OP.55 「英雄」
交響曲第4番 変ロ長調OP.60
交響曲第5番 ハ短調OP.67
交響曲第6番 ヘ長調OP.68 「田園」
交響曲第7番 イ長調OP.92
交響曲第8番 ヘ長調OP.93
交響曲第9番 ニ短調OP.125 「合唱」
インゲ・ボルク(S)、ルート・ジーベルト(A)、リチャード・ルイス(T)、ルートヴィヒ・ウェーバー(Bs)
ルネ・レイボヴィッツ指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
ビーチャム合唱協会
リーダーズ・ダイジェストという分野外からのリリースながら、知る人ぞ知る有名な録音。
リーダーズ・ダイジェストでの録音制作は米RCAが依頼を受け、当時のRCAの名プロデューサー、チャールズ・ゲルハルト(ゲアハート)のもと、当時提携関係であった英DECCAの名エンジニア、ケネス・ウィルキンソンが録音を一手に引き受けて行なわれました。
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名曲全集のような組物が多いリーダーズ・ダイジェストで、ベートーヴェン交響曲全集の企画が持ち上がった訳は、以下のようなゲルハルトの言葉が物語ってくれます:
「ベートーヴェンの9つの交響曲全曲をもう一度まとめて出そうとうい想念はパリの歩道に面したささやかなカフェーで生まれた。
私はルネ・レイボヴィッツと一緒にラヴェルのラ・ヴァルスとボレロの録音をやっていた。2人はコーヒーを飲みながら音楽について議論を戦わせていた。話はベートーヴェンに移った。レイボヴィッツはこう言った。
“世界で一番演奏回数が多いベートーヴェンの第5の出だしのところで、ここのところの小節が一度も正確に演奏されたことが無い、ということに気が付いたことがあるかい? それからここのところと..ここのところ”
そして48時間後には彼はベートーヴェンの演奏のなかで一般に行なわれている約600(!)ほどの誤りを見つけ出したことは明らかになったので、録音を行なわない理由はもうどこにもなくなった」
一見、あのラヴェルやシェーンベルクにも学んだレイボヴィッツのベートーヴェン?と思えても、当時一流のプロデューサーの目にとまった理由があったのです。
試しのどの曲でも聴いてみて下さい。今では当たり前になったピリオド楽器による演奏での軽快なテンポやキレ、こうした視点を今から半世紀以上も前に先取りしていた指揮者がいたのです。
付属する冊子はとくにレコード・ファンには堪りません。
後半の「ベートーヴェンの九つの交響曲における新しい音域の開拓」と題されたゲルハルトの手記は、プレイバックの様子や各首席奏者達(すべての主席が写真で紹介されています)など豊富な写真とともに、現場の雰囲気を伝えて実に興味深い資料となっています。
MONO。盤の状態は良好、殆どかけた跡はありません。