CEC といえばヴェテラン・オーディオファイルにとっては聞き覚えのある社名。当時は中央電機(株)といい、アナログ・プレーヤー用フォノモーターの製造で'54年に創業、プレーヤーを作るようになって主に国内外メーカーへのOEM生産で知られていました。
自社ブランドでは、すでにCD全盛となった1989年発売の高級アナログ・プレーヤーST930 は得意のベルトドライヴを採用、持てる技術をつぎ込んだ意欲作で、記憶に残るモデルとなりました。
このように当時ダイレクトドライヴが主流であった国産アナログ・プレーヤーのなかで、CEC は敢えてベルトドライヴに拘り、その技術,ノウハウを蓄積してきました。
CDの時代となり、アナログ・プレーヤーの雄、マイクロ精機と同じようにCDプレーヤーの製造を手掛けますが、マイクロと違ったのはそれまで積み上げてきたベルトドライヴをCDドライヴにも適用するという独創的発想で開発を開始したところでした。
'90年代初頭にベルトドライヴ・CDトランスポートを発表しますが、その道は平坦ではなく紆余曲折を経ながら実績を積んで確実にメカの改良を重ね、今では独自技術として内外に知られるまでとなりました。
一時開発に参画していたドイツ出身の設計者、カルロス・カンダイアス氏(現在はドイツのメーカーB.M.C. を主宰)の功績も少なくなかったでしょう。
音楽CDは線速度一定で信号を読み取るために、外周へ行くにしたがい回転速度を徐々に落とさなければなりません。
通常、この線速度調整はスピンドルモーターが受け持ちます。一般のCDプレーヤーやトランスポートは、ディスク用ターンテーブルの真下にモーターが配され、モーターの軸に直結したターンテーブルを直接駆動するダイレクトドライブ方式を採用しています。
しかし、制御された安定的な回転を得るためには、ある程度大きなモーターを使用する必要があり、そのモーターから発生する振動や電磁ノイズによって生じる信号の歪みから逃れることは困難です。
この問題を解決するために採用した独自のベルトドライブ方式では、重量級CDスタビライザーの使用によってターンテーブルの質量を上げ、慣性の力を利用することで極めて滑らかで安定したディスクの回転を得ることが出来ました。
その分モーターを小さくし、ディスクの回転軸から離れた位置に配し、遠くからベルトで駆動することで振動も吸収することが出来るため、音楽信号を安定かつ正確に読み取り伝送する理想的な環境を創りだしています。
ここまで読んで頂いて、アナログ・プレーヤーのカタログを見なれた方は、あれっと思われるはずです。
そう、レコード・ターンテーブルのアプローチと変わらないのです。
そんなこともあってアナログライクなこのCDプレーヤー、レコード好きも何となく受け入れ易いのではないかと思います。
音質の要であるDACにはESS 社の32bit対応、定評あるES9018K2M を採用。
またデジタルフィルターは、周波数特性の優れた「FLAT」と、リンギングを抑え高域での自然な減衰特性をもつ「PULSE」の切り替えが可能です(フロントパネルのプッシュスイッチ)。
この優れたDACを活かすために、デジタルのSPDIF 入力は24bit/192kHzまで対応するRCA 同軸と光TOSLINK を装備。PCと接続するUSB入力(*)は、PCM 32bit/384kHz とDSD128/5.6MHz のDoP 再生に対応します。
*Mac PC(X10.6.8以降)は、USBドライバーのインストールは不要ですが、Windows PC(XP以降)は、専用USBドライバーをインストールする必要があります。ハイレゾ音源などに対応する音楽再生プレーヤーはご自身でご準備下さい。
なお、Windows PCでは、foobar2000 にASIO ドライバーなどを追加することで、DSD64/128 の再生が出来るようになります。
外観カラーはシルバーとブラックからお選び頂けます。
良心的な価格も大きな魅力です。