ZYX ジックスは海外でも大変評価の高い国産フォノカートリッジ・メーカーです。
主宰する中塚氏はトリオやオルトフォン(MC20 を設計)、ダイヤモンド針等宝石精密加工技術を特徴とする並木精密宝石(株)を経て、自らのカートリッジ専門メーカーを立ち上げたその道のヴェテラン、わが国を代表するフォノカートリッジ製作者のひとりです。
彼のモットーは、今まで実態が掴めずなかなかメスの入れられなかったカートリッジ設計上の時間軸歪みの根絶。これがブランド名のZYX、つまり3次元座標軸(X:周波数,Y:振幅,Z:時間)のZ軸を最初にもってきたところに込められています。
その時間歪みへの対策が数々採られているのですが、一括して自ら「リアルステレオ(サウンド)発電系」と呼んでいます。
そのZYX が今年2016年で創業30周年となるのを機に(創立1986年)、新たに大きな転換点を迎えました。
ZYX はこれまで上位機種には、ボロン製カンチレバーを使用してきました。ボロンは軽くて丈夫、音の伝搬速度も速く、カンチレバーとしては理想の素材ですが、そのボロンでさえ「棒」として内部での音の乱反射があり、それが独自の響きを生じて、発電系にそのまま乗っていました。これは単体素材である限りどの素材でも避けられない現象と考えられていました。
しかしZYX では試行錯誤の結果、この現象を大幅に減少させることの出来る素材を開発、それがカーボンファイバー C-1000 です。
これは直径5μm(ミクロン)の炭素繊維を1000本収束して固めたもので(コンポジット)、硬度はチタンの1.5倍であるのに比重はダイヤの1/6、重量はボロンの半分、それでありながら強度はアルミはもちろん、ボロンやダイヤでさえ比較にならないほど高いという、驚くべき特性を誇ります。
そしてその「超軽量&高強度」に加えて、何といっても、1000本のカーボン繊維が振動を分散するため、ボロン等従来のカンチレバー素材で生じていた振動の乱反射が起こりにくい点が、かつて無い優れた新素材としての優位性を物語っています。
同社は1000本カーボン繊維を収束したこの独自のカンチレバー素材を、自信をもって「C-1000」と名付けました。
これでZYX の推進する「リアル発電系」がまた一歩、大きく前進したといえるでしょう。
さらに、
- カーボンカンチレバーを採用するにあたり、コイルの巻き方やパーツの取り付け方を一から見直し、煮詰めました。
- 硬質なポリカーボネートによるボディの側面構造を二重構造として、不要な共振の発生を防止して更に強度を高めています。
- 発電コイルの巻き線には従来と同じく、6N 無酸素銅線材を採用しています。
- マイクロリッジ・スタイラス
再生針には、100kHz 再生可能な薄板状ライン・コンタクト針を使用。ビデオ・ディスク再生用スタイラスの開発と同時に開発されたマイクロリッジ針は、天然ダイアモンドを使い、その結晶軸の最も硬質な面に沿って、レコードと接する面は幅6ミクロンの板状(リッジ)に加工、高域再生能力に関与する曲率半径を常に3ミクロンに設定しています。
このリッジ形状の特長は、針先が摩耗しても、曲率半径は常に3ミクロンに保たれるということです。そしてこのような鋭利な針先であってもラージRは60ミクロンと大きく、接地面積を十分取って、適切な接触加重としています。
Ultimate シリーズは、硬質・軽量なC-1000 カーボン・カンチレバーを採用しているため、カンチレバーの反り、捻れは皆無。それだけ針先に架かる応力の負担は軽減されます。従ってUltimate シリーズのマイクロリッジ針は寿命2000時間(!)を十分保証するものです。