*常時試聴展示していますので、いつでもお聴き頂けます。
カナダParadigm パラダイム社のブックシェルフ・スピーカー。同社最上級ライン Persona ペルソナの一員です(Persona B のBはブックシェルフの意)。
パラダイム社と聞いてご存知の方はほとんどいないのではないでしょうか。店主もうかつにも初めて聞く社名でした。
ということで、まずはメーカーのご紹介から。
今回が本邦初上陸となるパラダイムはカナダのメーカーで1982年創設といいますから既に40年を超える歴史を有します。専業メーカーとして結構な古株と言えるでしょう。
開発・設計を担うスコット・バグビー氏(Scott Bagby)が共同経営者のジェリー・ヴァンダーマレル氏(Jerry VanderMarel)と共にトロント郊外で創業。
Scott Bagby & Jerry VanderMarel
バグビー氏は当時のスピーカー業界の「パラダイム」を変えたいと考えていました。
ウェストコースト・サウンド,イーストコースト・サウンド,ブリティッシュ・サウンドなど、スピーカーは当時当たり前のように特色あるサウンドを売り物にしていました。また、クラシック向き,ジャズ向き,ロック向きなど音楽ジャンルを選ぶのが当たり前でした。
それに対し彼は、本当に「正しい」スピーカーを作ればローカルなカラーをもつことなどないし、音楽ジャンルを選ばず何を聴いても楽しめるはず、と考えていました。そのために感性だけに頼ることなく、科学的な研究・開発を重視、当初からカナダ国立研究機関(NRC = National Research Council)や大学の研究グループと連携してそれらの成果を実際の製品に活かす方法を採りました。
1993年にはその象徴となる「PARC」(Paradigm Advanced Research Center)を設立。そこにはNRC から2人の研究者が加わりました。以降、ここでの研究を基に開発に拍車がかかります。
新世紀を迎えた2001年には、トロントに北米最大級となる225,000 平方フィート(= 20,903 平方メートル= 6,323 坪)の製造工場を建設。ドライバーユニットの組み立てから自動車クオリティの塗装工程まで、繊細な手作業から大掛かりなCNC 製造工程まで、以下のような一貫した生産が行われています;
● 木材のカットから合板の組み上げ、塗装と磨き仕上げまで、エンクロージュアの組み立て&仕上げ工程をCNC (コンピューター数値制御)にて製造。
● バスケット(ドライバー・フレーム),バッフル,ベースなどの樹脂パーツの射出成型。
● 成型,熱プレス,仕上げを含む、グリルネットの設計,製造。
● 樹脂及びアルミ・コーンとそのオーバーモールディング・サラウンド(エッジ)製造のための独自のCIM (カスタム射出成型)設備。
● CAD によるドライバーとクロスオーバーネットワークの設計・製造。
● ボイスコイルの巻き上げと組み立て。
● 通常の製造基準を大きく上回る、+/-0.1ターンの巻き線精度でのネットワーク用インダクター(コイル)の製造。
● スルーホール基板、表面実装工程(SMT)の採用。
● エレクトロニクス設計及びソフトウェア開発を担うPARC (The Paradigm Advanced Research Center)
● 粉体塗装を含む塗装と、高級家具グレードの仕上げを行う設備。
また、ここには北米最大の無響室があり、真のノンカラーレーションの達成に大きく貢献しています。
いかがでしょう、今まで我が国では無名に近い存在だったにもかかわらず、かなりの歴史を有する大メーカーであることが分かります。
つい最近まで、マーケットを北米、カナダとアメリカ合衆国に絞っていて、グローバルな展開を図ったのは2014年になってからということで、ようやく私たちの前にもお目見えとなったわけです。
これだけ企業規模が大きくなり、商品展開も幅広くなりながらも、スコット・バグビーが当初掲げた、科学的根拠に基づいた研究・開発を最重要視する姿勢が現在も貫かれていることは専門メーカーとしてとても重要なことです。
その最新・最大の成果が、新しいペルソナ・シリーズに盛り込まれているのです。
それではPersona B の優れた独自技術を見ていきましょう。
全帯域をベリリウム・ダイヤフラムで構成
ペルソナ・シリーズ最大の特徴は何といっても中高域のドライバーにベリリウム製の振動板を採用している点です。
とくに小型のPersona B はトゥイーターとウーファー両方ともベリリウム振動板のドライバーで構成されていますので、全帯域をベリリウム・ダイヤフラムでカバーしているという意味で、現在世界唯一のスピーカー・システムです。
Berylium (Be)
ベリリウム(Be、原子番号4)は非常に硬く、軽い金属で、加えて優れた音の伝搬性を示します。つまり響きにくいということです。
こうした特性をもつことから、金属振動板の中でもアルミやチタン以上に優れた素材と言われてきましたが、高い硬度の代償として割れ易い(もろい)のが難点で、トゥイーター・サイズならまだしもミッドやウーファーサイズの振動板の製造は極めて困難でした。
パラダイムはベリリウムの生産で世界有数の技術を誇る米国MATERION マテリオン社と共同で純粋なベリリウム素材であるTruextent による178mmΦの大口径ダイヤフラム開発に成功しました。
↑ 製造工程中のPersona B ウーファー・ドライバー
↑ こちらは同口径のミッドレンジ・ドライバー(マグネットが小さい)ですが、コーン形状は同様
PPA 位相補正音響レンズ
各ドライバー前面に着いている特徴的な金属製グリルネットは、外観デザインのためでも、ダイヤフラム保護のためでもありません(もちろんそれらの役目も兼ねてはいます)。
コンピューター解析によって、与えられた形状の振動板形状で音を放射した際に、位相の乱れを補正して発音するための一種の音響レンズで、「PPA(Perforated Phase-Aligning)」と名付けられています。
コーンドライバーの位相改善の手段として、よくミッドレンジのコーン中央に弾丸のようなフェイズプラグが設けられますが、PPA は遥かに効果的に位相補正を行う画期的な新機能です。
PPA によって位相のずれた信号を減らして位相の整合を図ることで以下のようなメリットが得られます;
● 高忠実度
● 透明度の向上
● 明瞭度の向上
● 出力の向上
歪感の少ないコヒーレントなサウンドの秘密はここにもあるのです。
PPA 音響レンズの原理を分かり易く説明した模式図をご覧下さい。
分かり易いトゥイーターのドーム型振動板を例にとって説明します;
特許のART エッジの採用
パラダイムの特許技術、ART (Active Ridge Technology)エッジを採用。
通常、振動板の周囲のエッジはコーンとバスケットフレームに接着剤で貼り付けますが、経年劣化もあってコーンが前後に激しく動き続けるうちにその接着がはがれてしまうことは少なくありません。
パラダイム社のART は、エッジを接着ではなくコーン上にオーバーモールディング製法により直接射出成型します。
エッジ素材はオーディオグレードのTPE(Thermoplastic Elastomer、熱可塑性エラストマー)製。下の写真のように独特の凸凹のある形状となっています。
ART エッジによりドライバーの能率は3dB アップし、歪率は50% 低減したとのこと。
豊富なカラーリング・カスタマイズ
もうひとつの特長が、豊富なカラーリングのカスタマイズ。
以下の3点(エンクロージュア,音響レンズ,アルミバッフル)のカラーを自由に選んで組み合わせることが出来ます。
●エンクロージュアはすべて自動車グレードのハイグロス塗装。
基本の標準カラーが5色(グロス=光沢仕上げ);
・アリアブルーメタリック
・カーボンブラック・グロス(バッフル,本体キャビネットともにブラック)
・バンタブラック・グロス(バッフルがシルバー,本体キャビネットはブラック)
・ハーモニーホワイト・グロス
・ソニックシルバーメタリック
プレミアム仕上げが18色(オプション価格となります);
・ダイヤモンドホワイトメタリック ・パーチメント ・ブラッシュメタリック
・シーフォームグリーンメタリック ・トープメタリック ・デザートゴールドメタリック
・タフィーメタリック ・バーントオレンジメタリック ・サフランイエローメタリック
・バーミリオン ・キャンディアップルレッドメタリック ・ラグーナブルー
・アンスラサイトメタリック ・アメジスト ・ダコタブラウンメタリック
・メルローメタリック ・ビリディアン ・ブリティッシュレーシンググリーンメタリック
●PPA 音響レンズは2色;
・シルバー
・ブラック
●アルミバッフルは2色;
・シルバー
・ブラック
カラーリング・カスタマイズのシミュレーションが出来ます
⇒ https://design.paradigm.com/ja/persona/customize
各種解説ビデオもご覧下さい;
●パラダイム社の紹介
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●ベリリウム製振動板
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●PPA 位相補正音響レンズ
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●製造の様子
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●「Crafted in Canada」の誇り
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●カラーリング・カスタマイズ
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