“キャスリーン・フェリアー/バッハ&ヘンデル・アリア集”
J.S.バッハ/
ミサ曲 ロ短調〜御父の右に座したもう主よ
マタイ受難曲〜ざんげと悔悟は罪の心をふたつに押しつぶし
ヨハネ受難曲〜事終わりぬ
ミサ曲 ロ短調〜神の子羊
ヘンデル/
オラトリオ「サムソン」〜万軍の主よ、帰りたまえ
オラトリオ「メサイア」〜おお、なんじ、よき訪れをシオンに告げし者
オラトリオ「マカベウスのユダ」〜天なる父
オラトリオ「メサイア」〜主は世の人に侮られ
キャスリーン・フェリアー(Cont)
エイドリアン・ボールト指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
英国の名コントラルト、キャスリーン・フェリアーが1953年にがんのため急逝、前年52年に録音されたこのアルバムが彼女の最後の思い出となりました。もちろんこの時代では彼女の録音は全てモノラルでした。
その後ステレオ録音が主流となり、積極的にその新しい録音方式を推し進めていたDECCA ではこの記念碑的録音を何とかステレオで蘇らせることは出来ないか、当時ワーグナー「指輪」全曲録音でステレオ効果を大いに印象付けた名プロデューサー、ジョン・カールショウが1960年、レコーディング・エンジニアのジョン・ウォーカーとともに画期的な企画を実行します。
オリジナルの録音でオーケストラの伴奏を付けていたボールトが、オーケストラも同じロンドン・フィルを振って、場所も同じロンドンのキングズウェイ・ホールで、まずフェリアーのオリジナル・テープを再生してその表情やテンポなどを子細に認識しながら練習、ボールトは腕に着けた小さなスピーカーから聞こえるフェリアーの声に合わせてタクトを振って録音は完全なステレオで収録、それにモノラルのフェリアーの歌唱をほぼ中央に定位するように左右チャンネルに振り分け、音質や定位を入念に調整して特殊なステレオ盤として仕上げました。
実際に聴いてみると、疑似ステレオと違って真のステレオ録音であるオーケストラは自然な拡がりを聞かせるのは当然ですし、8年前のフェリアーの声は僅かに古く感じるものの、中央に定位させるにはモノラルでもほぼ違和感は無く、当時の世界中の彼女のファンが大いに喜んだことは容易に想像出来ます。