製品型番のART というのはAudio-Technica Reference Transducer の略称で(もちろんアートにも掛けているのでしょう)、オーディオテクニカ製品の中でも特別なモデルにのみ使用されています。
既にART シリーズのMCカートリッジとしてはAT-ART9XA とAT-ART9XI、それとスペシャルモデルのAT-ART1000 が発売されていますが、今回発売されるAT-ART20 はART9XA とART9XI をさらに推し進めたひとつの結論として完成されました。フラグシップ機AT-ART1000 の技術も盛り込まれ、価格も9シリーズと1000 のちょうど中間となっています。
オーディオテクニカがこのモデルにかけた意気込みをご紹介:
「当社が持つカートリッジの技術と長年培われたノウハウを駆使し、最良の素材を採用しながら高度な加工や最適な構造、一線を画すデザインでアナログを深く楽しめること。また、アコースティックのより良い音を突き詰め、空芯型が得意とする生々しい演奏の表現力を、鉄芯型でも実現させること。これらを命題に、ハイエンドラインナップの名に恥じない、鉄芯型のカートリッジを開発しました。」
● ハウジングに切削チタンを採用
独特なデザインを実現したハウジングには精密切削チタニウムを使い、光沢研磨処理で仕上げてあります。
この加工には100年以上もの歴史のある、福井県鯖江市の眼鏡産業で培われた高度な切削加工技術や研磨技術力を活かし、今までのカートリッジにない美しい曲面を描く有機的なデザインを具現化しました。
また、チタニウムの薄肉化を図り、大幅な軽量化も実現しました。
● 異素材の組み合わせにより共振を抑制
ベースには使い慣れて定評ある「アルミニウム」を、ハウジングには同シリーズ初となる「チタニウム」を、そしてアンダーカバーには同じく初となる「エラストマー」をそれぞれ採用しています。さまざまな異素材を組み合わせ、製品本体で発生する共振を効果的に抑制します。
● 新設計の磁気回路により発電効率を向上
AT-ART9XI の磁気回路をベースに、フロントヨークを0.6mm 厚くすることで磁束密度を向上、発電効率を上げることが出来ました。また、コイルの巻き数やインピーダンスを変えることなく、15% 以上の出力電圧の効率化を図っています。
● チタニウム採用のチップ補強板で針先を軽量化
ART シリーズのフラッグシップモデル AT-ART1000 と同様、ダイヤモンドチップを固定するチップ補強板にはチタニウムを採用。質量の軽量化を図り、高域特性を改善しています。
● 特殊ラインコンタクト針とφ0.28ソリッドボロンカンチレバー(上図参照)
スタイラスチップには無垢特殊ラインコンタクト針を採用。
さらに、ボロンカンチレバーの先端からコイルまで、支点に向けて段階的に太くなるステップドパイプ構造も採用しています。カンチレバーとアーマチュアの接続部が二重構造となるため剛性が高まり、カンチレバーの強度の向上とともに不要な振動を抑制します。
● 厚膜の金メッキを採用した高音質ターミナルピン
金メッキ部分の厚みを当社従来品の約30倍に増すことで、接触抵抗の低減と信頼性を高めました。
● カートリッジ側アルミボディに固定用ネジ(M2.6)が切ってありますので、ヘッドシェルの上からビスで留めるだけで確実に固定が出来て楽です。ヘッドシェル一体型アームを搭載する多くの海外プレーヤーにも取り付け易くなりました。