Sinobu Karaki, founder
Aurorasound オーロラサウンド は横浜に拠点を置くハンドメイド・アンプ工房。
主宰する唐木氏は28年間余り半導体メーカーの日本テキサスインスツルメンツに在籍、2012年にAurorasound を立ち上げました。
まず彼の自己紹介から:
「オーロラサウンドは海と港の街、横浜にあるハンドメイドアンプビルダーの工房です。音楽を心から愛し、自らも趣味でギターを演奏する一オーディオマニアが本当に自分がほしいオーディオ機器を作るうちに、製品の開発と発表に至りました。
綿密で基本に忠実、かつ大胆な設計アプローチは、ひとつひとつ丁寧に手作りされた内部構造とともに、物理的電気的な測定はもとより、耳による判断で最終的に組み上げられています。
楽器を作る職人のようにオーディオ機器を製作する、という考えはアンプは工業製品ではなく作品でありたいという哲学によっています」
新しいフォノイコライザーアンプ EQ-100 は、その唐木氏の好みが色濃く出た、マニアライクな製品です(モノラル構成)。
SPからLPまですべてのアナログレコードのカッティング特性に対応した可変型マルチカーヴフォノイコライザアンプで、低域補正のターンオーバーと高域補正のロールオフのイコライザ補正値はパネルの表示どおりれぞれ10種類が完全独立で調整出来、お互いの干渉が無いので100通りの組み合わせが可能です。
それぞれの可変値はコンピューターを用いた回路シミュレーターで各フィルター回路を緻密に計算して設定、ロータリースイッチでコンデンサーと抵抗を切り替える方式としました。各スイッチはレコードを聴きながら操作出来るように切り替え時のノイズがほとんど目立たないように配慮されています。
従来の可変型イコライザではボリュームを使って各種カーヴを変化させるものが多くありましたが、ボリューム式では回転摺動子の接点品質や回転位置と抵抗値の誤差などの問題でアバウトなパネル表示とならざるを得ません。EQ-100 ではこれらの懸念をすべて無くしました。
●ターンオーバー特性(10ポジション独立可変)
Flat, 200Hz, 250Hz, 300Hz, 350Hz, 400Hz, 500Hz/12dB,500Hz/16dB,500Hz/20dB,800Hz
●ロールオフ特性(10ポジション独立可変)
Flat, -2dB, -4dB, -6dB, -8dB, -10.5dB, -12dB, -13.7dB, -16dB, -18dB at 10kHz
- 入出力
EQ-100 はモノラル構成ですがステレオシステムの機器と接続し易いように入力と出力はそれぞれ2つずつ備わっており(モノラルが2つずつ)、各々L/R に接続出来ます。もちろんスピーカー1本の完全モノラルシステムでも問題ありません。
入力はMCとMMのカートリッジに対応しており、MCでは現代のモノラルMC型に最適なゲインと負荷になっています。
MM入力では通常の47kΩ負荷のMMカートリッジだけでなく、バリアブルリラクタンス型(通称バリレラ)に最適な負荷もあり(VR-1)、またその放送局型や初期のバックマンタイプにも対応しています(VR-2)。これらの切替えはフロントパネル一番右のロータリースイッチで行います。
ステレオカートリッジを接続した場合は本機の内部で縦方向の振動をキャンセルし横方向のR+Lの信号だけを取り出し、ノイズの少ない定位の定まったモノラル信号を出力します。
出力は定格2Vrms で準的な信号レベルとなっており、現代のシステムにレベルを合わせてあります。
本機が2台あればL/R独立したステレオ・フォノイコライザーアンプとしてお使い頂くことも可能です。
- 各種機能
オーロラサウンド・フォノイコライザーシリーズでお馴染みの大型のMUTE ボタンを備えており、カートリッジ上げ下げの際のノイズを消すことが出来、レコードかけ替えが快適です。
またSPや初期モノラルLPではオートストップ機構を働かせるため曲の終わりにアームを左右に大きく振らせるように溝を切ったものがありますが、電機再生ではそれが過大なノイズとなります。その場合このMUTE ボタンを押して即座にノイズを消すことが出来、便利です。
さらに、RIAA との比較が簡単に行えるようにVariable/RIAA の瞬時の切り換えも可能としました(フロントのトグルスイッチ)。
- アンプ回路、使用部品
回路は各ブロック内で部品が最短で配線されるよう配置し、またグランドパターンの入力,出力,電源部の分離などの配慮がされています。
1980年代のアナログ回路最盛期のNEC と東芝製の2SCxxx, 2SAxxx, 2SKxxxといったシリコントランジスタとFETを多用したVIDA-MkIIと同じアンプモジュールを使い、また最高級オペアンプであるバーブラウンOPA627,リニアテクノロジーLT1028 を適材適所に採用、音質と電気的特性の両方兼ね備えるべく設計されています。
コンデンサーはドイツのWIMA や国産のポリプロプレン型、抵抗はTAKMAN、電源部はトロイダルトランス、整流はノイズが極小なショットキバリアダイオードなど吟味された部品を惜しみなく採用、ロータリースイッチやMUTE スイッチ類はすべてALPS,OMRON,NKK といった信頼のおける国産品です。
ブロックダイヤグラム