Dynavector ダイナベクターは1978年に元東京都立大学教授で機械工学が専門の故・富成 襄博士が創業、当初より大変技術志向の強いメーカーで、特に欧米では極めて高い評価・支持を誇ります。
今回の新製品 XX-2A は、磁気回路を構成する部分の材質の製法、"焼鈍"にメスを入れて開発されました。
MCカートリッジにおいては、カンチレバー、コイル,ダンパー,高剛性ボディなど各要素に優れた性能が要求されますが、カートリッジを構成する磁気回路も極めて重要な要素です。
カートリッジの出力信号は、磁気回路の発生させる磁束の中で振動系(コイル)が動くことにより発電されます。
そのため、磁束は高密度でなおかつ安定した状態でなければ良好な出力は得られません。
ダイナベクターではカートリッジの磁気回路に純鉄を採用しています。純鉄は透磁性が高く磁束を高密度で維持しますが、特にその安定性が優れており歪みの無い出力を得るには最適な材料と言えます。
しかしパーツとして加工成形される際、塑性変形により原子レベルで結晶構造が歪められ透磁性が大きく損なわれてしまいます。
歪んでしまった結晶構造を再生するには"焼鈍"(しょうどん Annealing)、いわゆる焼きなましが行われます。
加工成形されたパーツを加熱冷却することで透磁性を回復させる工程を磁気焼鈍と言いますが、汎用的な磁気焼鈍では結晶構造の歪みは完全には除去出来ず透磁性も完全には回復しません。パーツの材質や大きさ形状等により磁気焼鈍の条件は細かく異なるためです。
XX-2A の開発にあたり、焼鈍温度,焼鈍環境,加熱時間,加熱率,冷却率など磁気焼鈍の最適化に拘り、純鉄ならではの優れた磁気性能を引き出すことに成功しました。
【その他の特徴】
- アルニコマグネットを使用した磁気回路設計
マグネットには磁気抵抗の低い高価なアルニコマグネットを使用。
現在の主流であるサマリウムコバルト磁石やネオジミウム磁石等の高エネルギー希士類磁石に比べて、アルニコ磁石は磁気抵抗が極めて低く、レコード再生時の磁力の揺らぎが少ないため、S/N が高く立ち上がりの良い音が特徴です。
フロントヨークに巻かれた巻線コイルはエアギャップ内の磁束(Flux)を安定させるための特許取得技術フラックス・ダンパーで、上位モデルと同等の構造を採用しています。
フロントヨークに巻いてあるコイルが「フラックス・ダンパー」
- 高剛性の磁気回路構造
フロントヨークとリアヨークは磁石と共にステンレスボルトで固定し、高剛性の磁気回路構成としています。
組み立ては熟練技術者による完全手造りで、音質に大きく影響する締め付けトルクの調整など、一品一品の綿密な組立て工程により生産されています。
- コンプライアンス
コンプライアンス10mm/N,重量8.9g のXX-2A は一般的なトーンアームの相性も良く、軽質量から中質量までのほとんどのトーンアームにマッチングします。
ヘッドシェルはあまり重くないものを推奨。
- ソリッドボロン・カンチレバー
6mm 長の0.3φソリッドボロンカンチレバーにPathFinder(PF)ラインコンタクト針を装着。
軽量且つリジッドな振動系を構成しています。