[CD-R盤]
ブルックナー/交響曲第6番 イ長調(ハース版)
ヤッシャ・ホーレンシュタイン指揮 ロンドン交響楽団
ホーレンシュタインとロンドン交響楽団による、聴衆を入れずに行われたラジオ放送用スタジオ・ライヴ。
英国人コレクター所有の音源からのディスク化で、オリジナルはエアチェック録音。テープトラブルと思われる若干のノイズはあるが、エアチェックとしては年代の水準を上回る良好な音質。因みにBBC のオリジナル・テープは残念ながら放送後消去(再利用)されて存在しない。
当演奏は国内外でCD-R 等による数種の既出盤が存在するが、代表的な海外盤は疑似ステレオ化されており、オリジナルと比べると演奏の印象が異なるようだ。音質も改善されているらしいが残響が付加されるなど、やや「演出過剰」ぎみとのこと。一方、その他の既出盤は随所に散見されるノイズ等が未処理で、こちらは「手抜き」といえる。
今回ディスク化に当たっては、あくまでモノラルのまま、耳障りなノイズについては、音質を損なうことなくソフトウェアで除去することに努め、また、明らかに低域過剰でブーミーだったため周波数バランスを調整し、中低域の混濁を解消、その他の手当ての結果、見通しの良い本来の演奏が蘇った。
ホーレンシュタインは、1922年ウィーン響とのデビュー・コンサートでマーラーの交響曲第1番を指揮、1928年独ポリドールにベルリン・フィルとブルックナーの交響曲第7番を録音するなど、若い頃からブルックナーとマーラーを得意としており、演奏依頼も多かったようだ。但し第6番はブルックナー中期以降の作品の中では地味な存在で、当録音も1961年に行われたが実際に放送されたのは3年後の1964年。BBC 自体も保存すべき音源とは認識しなかったためか、前述のように放送後のテープは消去されてしまった。このように散々な状況ではあったが、奇特なリスナーによってエアチェックされ音源が保管されていたことは幸いであった。
ホーレンシュタインは、前述のように1928年に早くもベルリン・フィルとブルックナーの交響曲第7番をスタジオ録音。第二次世界大戦後も、1955年と1953年米ヴォックスにそれぞれ第8番と9番をスタジオ録音するが(米ヴォックスはチャレンジングなレコーディング・レパートリーを開拓していた)、1950年末に米ヴォックスとの契約終了後、ブルックナーのレコーディングは途絶えてしまう。
1960年代以降、ホーレンシュタインは米リーダーズ・ダイジェストや英EMI、英ユニコーンなどとレコーディングを行っているが、リーダーズ・ダイジェストはポピュラー名曲が主体で、EMI は大御所クレンペラーが専属契約を結んでおり、ホーレンシュタインがブルックナーを録音する機会はなかった。因みに、クレンペラーも交響曲第6番のレコーディングを度々希望していたが、プロデューサーのウォルター・レッグに売れ行きが見込めないと拒まれ、レッグ引退後にようやく録音にこぎ着けたというエピソードが残っている。結局、EMI とユニコーンには、もうひとつの得意のレパートリーであるマーラーを数曲録音したのみとなり、今日聴くことが出来るホーレンシュタインのブルックナーは、大半が放送やライブ録音という状態となっている。
マーラーの再評価が1960年代後半から始まった一方、ブルックナーについては、本国ドイツ・オーストリア以外では再評価が1970年代以降に遅れた。1973年に75歳で亡くなったホーレンシュタインがさらに5年でも長生きすれば、ブルックナーの新たなスタジオ録音が実現していたに違いない。
ホーレンシュタインのブルックナー交響曲第6番は当ディスク以外に、1968年、イエーテボリ響とのライヴ録音が残されている。
※総合カタログは下記を参照下さい:
https://www.ne.jp/asahi/classical/disc/index2.html
*【ご注意】
当商品はCD-R盤です。CD-Rは通常の音楽CDとは記録方法が異なり、直射日光が当たる場所、高温・多湿の場所で保管すると再生出来なくなる恐れがあります。
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