[CD-R盤]
ブルックナー/交響曲第9番 ニ短調
ジョン・バルビローリ指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
バルビローリとベルリン・フィルによるブルックナー交響曲第9番、1966年9月17日、ベルリン・フィルハーモニーでのライヴ録音。
ドイツ在住ロシア人コレクターからの提供音源で、オリジナルはいずれもエアチェックではなく、放送局保管音源のコピーと思われ、モノラルながら非常に良好な音質。
ただ、出所はドイツの放送局ではなくオランダ放送らしい。放送局間の交換音源として送られたようだ。1966年に至ってもステレオではないことが惜しまれるが、当時、西ドイツの放送局は、部分的にステレオ録音を導入していたものの、本格的に普及したのは1960年代末であり、残念ながら一歩間に合わなかった。
なお、当演奏にはエアチェックと思われる既出盤があるが、欠落やドロップアウト、ノイズが多い上に、ラジオ放送を想定してフォルティシモを抑え、ピアニシモを大きくする圧縮加工が行われていたらしく、鑑賞には不都合が多かった。
当ディスクの音源は既出盤とは異なり、欠落は無くノイズも僅かにヒスノイズが感じられる程度。但し、既出盤ほどではないと思われるが、若干ダイナミックレンジが圧縮されていたため、ディスク化に当たってはダイナミックレンジを拡大。音質に影響を与えない範囲でヒスノイズを低減。結果的に、鑑賞には全く不満の無い状態とすることが出来た。演奏のイメージも、既出盤の演奏はラフで大味な印象だったが、当ディスクでは緻密でしかもバルビローリらしい情熱的な印象へと激変した。会場ノイズはほぼ皆無。
バルビローリはBPO と1949年にスコットランドのエジンバラで初共演、1950年にベルリンで再び共演、10年ほどのインターバルを経て、1961年に3度目の客演指揮を行った。この時の公演が大好評となり、その後バルビローリが亡くなる1970年まで毎年指揮、BPO との共演は84回に上った。
その間には、BPO の希望によりマーラー交響曲第9番のレコーディングを行うなど親密な関係を築いた。当時のBPO 支配人ヴォルフガング・シュトレーゼマンによれば、マーラーの交響曲第9番については、「バルビローリの演奏を聴くまでは、(団員も含め)こんなに良い作品とは思っていなかった」とのこと。1960年代半ばになっても、ドイツでは当ディスクに聴くブルックナーに比べて、マーラー作品への評価が確立していなかったのだ。
当ディスクが録音された1966年、バルビローリは67歳を迎えていたが、ハレ管首席指揮者とヒューストン響音楽監督を務める傍ら、レコーディングや各地のオーケストラに客演する多忙な日々を送っていた。
1月にはBPO に客演してマーラーの交響曲第6番などを演奏、同じく1月から2月にかけてハレ管を指揮、ブルックナーの交響曲第9番などを演奏、3月にはヒューストン響を指揮、米国内ツアーを行いニューヨークでマーラーの交響曲第5番を演奏(当演奏はPREMIERE 60117DFでディスク化済み)、4月から7月には再びハレ管を指揮、その間6月にはチューリヒ・トーンハレ管とジェノヴァのテアトロ・カルロ・フェリーチェ管に客演、7月にはロンドンで、ハレ管,ロンドン響,ニュー・フィルハーモニア管とともに英EMI にディーリアス,エルガー,シベリウス作品をレコーディング、8月にはモンテカルロ・フィルとフィレンツェ・テアトロ・コムナーレ管(別名5月音楽祭管)に客演後、ローマ国立歌劇場でプッチーニ「蝶々夫人」を英EMI にレコーディング、続けてローマ聖チェチーリア音楽院管に客演、9月には当ディスクに聴くBPO への客演と、休むことなく活動を行っていた。
9月17日の公演は、ブルーノ・ワルターの生誕90周年を記念する演奏会で、前半にはモーツァルトの交響曲第40番、後半にこのブルックナーが演奏された。前記のマーラーとは異なり、モーツァルトやブルックナーは当然BPO 伝統のレパートリーであり、当演奏が行われた半年前の3月16・17日にカラヤンがブルックナーの同曲を取り上げており(19日に独グラモフォンにレコーディング)、翌シーズン(1966〜1967年)に当たるものの、シーズン開始早々に同じ曲を取り上げていることが異例であるとともに、記念演奏会を任せるほどにBPO がバルビローリを高く評価していたと言える。
バルビローリがブルックナーをレパートリーとしたのは、それほど古いわけではなく、1940年ニューヨーク・フィル常任指揮者時代に第7番を1回2公演取り上げているが、本格的に取り組んだのは第二次世界大戦後の1950年代からである。当時の英国ではブルックナー作品に対する理解が遅れ、1960年代に入っても、BBC ラジオはクレンペラー指揮のブルックナーを深夜の現代音楽専門番組で放送していたという。
このような状況下、バルビローリも交響曲第9番をかなり遅れて1961年に初めて演奏しているが(ハレ管とBBC ノーザン響の合同オケ)、それから5年後の当ディスクの演奏では、既にブルックナー独特の語法を完全に自家薬籠中のものとしている。またブルックナーの演奏では経験豊富なBPO の貢献も大きいと思われ、現在3種確認されているバルビローリによるブルックナー交響曲第9番の中では出色の演奏と言える。
※総合カタログは下記を参照下さい:
https://www.ne.jp/asahi/classical/disc/index2.html
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