[CD-R盤]
ベートーヴェン/
交響曲第5番 ハ短調 OP.67
「運命」
序曲「コリオラン」 OP.62
ヘルマン・アーベントロート指揮 ソフィア・フィルハーモニー管弦楽団
1955年3月9日、ブルガリア・コンサート・ホール(ソフィア)
モノラル、ライヴ収録
巨匠アーベントロートがブルガリアのソフィア・フィルを客演した際のライブ録音。
ドイツ在住ロシア人コレクターによる提供音源。
オリジナルはブルガリア国営放送によってラジオ放送用にテープ録音されたもので、提供音源は放送局保管音源のコピーと思われる。
1955年当時のブルガリア国営放送の録音技術水準は不明だが、当録音は優秀とは言えないものの決して貧弱な音質ではなく、1940年代末〜1950年代初頭のドイツの放送録音と同等で、ノイズレスでバランスも良く、少なくともアーベントロートの解釈を十分理解出来、鑑賞上の不満はない。
第二次世界大戦後ブルガリアが社会主義化され、ソ連や録音技術では先進的だった東独、チェコなどから録音機器や技術を導入したと想像される。
なお、恐らく放送のために拍手がカットされているほか、会場ノイズはわずかに数ヶ所聞こえるが、微少な音で鑑賞の妨げにはならない。
なお、当音源は20年?ほど前にブルガリアのレーベルによってCD化されているが、サラウンドステレオ的な残響(というよりは過大なエコー)が付加された異様なサウンドだった。幸い当ディスクの提供音源にはそのような不自然な残響はなかったが、厳密に聴くと微少な残響が付加されていた。
第二次世界大戦の結果、旧ソ連が戦利品としてドイツ帝国放送からフルトヴェングラーの演奏を含む大量の録音テープを押収。その後、1987年にオリジナルではないコピーテープ20本が自由ベルリン放送に返還された際、多くのテープに残響が付加されていたことはよく知られている。おそらくラジオ放送を行う際に、古い録音を聞きやすくするため放送局が付加したと思われるが、アーベントロートによる当演奏も、ソ連の放送技術の影響下で同様の措置が採られたと想像される。
今回のディスク化に当たっては、録音会場のオリジナルの残響と後に付加された残響を切り分けることは困難なため、若干残響の長さを切り詰めることで、より原音に近付けるべく処理を行った。
アーベントロートは第二次世界大戦後、社会主義化された東独のライプツィヒを中心に活動した結果、コンヴィチュニーとともに同国を代表する指揮者として、ソ連や東欧諸国などへの客演を盛んに行った。
近年もポーランド訪問時のベートーヴェン交響曲第7番などの珍しい録音がCD化されており、当ディスクに聴く第5番も、第二次世界大戦前にスタジオ録音を行っているが、戦後に限ると現在確認されている唯一の録音である(未発表録音が一種あるようだが詳細不明)。
ソフィア・フィルはブルガリアを代表するオーケストラではあるものの、国際的には決して一流の団体とは言えず、ホルンなどに技術的なほころびも目立つが、ブルガリアは大歌手などの有名演奏家を輩出した音楽的伝統があり、オーケストラについてもアーベントロートの演奏意図を十分に理解し対応する音楽性を持っていると言える。
なお、当ディスクのプログラムでは一回の演奏会としてはやや短く、おそらくコリオラン序曲の後に、協奏曲など1作品が演奏されたと思われる。こちらの発掘も期待したい。
アーベントロートというと、ライプツィヒ放送響とバイエルン放送響を指揮した2種のブラームス交響曲第1番の「怪演」により、破天荒な解釈を行う指揮者というイメージが強いが、ベートーヴェン交響曲第9番の数種の録音に聴くように、多くの場合、剛直かつスケールが大きいドイツの巨匠指揮者の典型と言える。当ディスクに聴く2曲も、亡くなる前年ではあるが、脳卒中による急死だったため、当ディスクでも幾分速めのテンポで、堅固でいわゆるドイツ的な演奏を行っており衰えは感じない。
アーベントロートは、当ディスク以外にベートーヴェンの交響曲第5番を1937年独オデオンにベルリン・フィルとスタジオ録音したほか、コリオラン序曲を1949年にライプツィヒ放送響と放送録音していた。
※総合カタログは下記を参照下さい:
https://www.ne.jp/asahi/classical/disc/index2.html
*【ご注意】
当商品はCD-R盤です。CD-Rは通常の音楽CDとは記録方法が異なり、直射日光が当たる場所、高温・多湿の場所で保管すると再生出来なくなる恐れがあります。
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