販売価格は、どうぞご相談下さい。
わが国では、一般的なトーンアームに比べるとマイナーな存在のリニアトラッキング・アーム(タンジェンシャル・アーム)。国内現行製品としては、このクリアオーディオのTT3とTT2がカタログに載るのみでしょう。
なぜマイナーなのかといえば、複雑になりがちな構造と、取り扱い難いという先入観、そして国内の単体アーム製造メーカーが全く興味を示さなかったのも浸透しなかった理由のひとつと言えましょう(但しシステム一体型アーム搭載プレーヤーとしては、テクニクスを始めパイオニア,ヤマハ,ダイヤトーン,トリオ,アイワなど、かつては沢山の普及機が存在しました)。
しかし欧米には過去・現在を問わず様々なリニアトラッキング・アームが存在し、それぞれ独創的なアイデアとデザインで楽しませてくれます。かく言う私も、信者というほどではないものの、メカニカルな興味の尽きないリニアトラッキング・アームが大好きです。
また、一度トラッキングエラーゼロの音を聴いてしまうと、忘れてしまうことは困難。よく引き合いに出されるように、元々レコードグルーヴを刻むカッティングマシンのカッターヘッドもリニアトラッキングなのですから、当り前なわけです。
ではなぜ、そうした明確な優位性がありながら主流となり得ないかは、その動作の難しさに尽きます。
針がレコード盤の溝をトレースして次第に中心方向に移動していく、その動作に合わせていかにヘッドを(カートリッジを)水平方向に直線移動させていくか、この機構の難しさ・複雑さが最大のネックとなります。
これを実現するためのメカニズムには、大きく分けて二つの方式があります。
- センサーを使った電子制御でモーターを動かし、ワイヤーやラック&ピニオン・ギヤ―などでヘッドを駆動する方式
- 針がトレースしてレコードの中心に向かって動くその力を利用して、ヘッドを平行移動させる方式
国内に存在したリニアトラッキング・アーム・プレーヤーは全て1.の電動ドライブアームでした。あの美しいB&Oのリニアトラッキング・プレーヤーもそうでした。
この方式はモーターと制御ユニット,駆動メカニズムなど大掛かりで複雑になり、基本的にプレーヤーと一体化したアームにならざるを得ません。例外としては、Rabco SL-8 やGOLDMUND社創立のきっかけとなった伝説的なT2 アームくらいでしょう。
そのため現在ある単体リニアトラッキング・アームは全て2.の方式です。
この方式は針に負担を掛けずに、針に掛かる中心方向へ向かう力、インサイドフォースだけでヘッドを直線移動させなくてはならないという、不可能に近い挑戦となります。その工夫がまた、この方式のアームの面白さでもあるのですが。
いかに直線移動の際の摩擦を減らすか、ここに目標は集約されます。
その解決に、多くのアームは、浮かせて非接触でスライドさせるエアー・ベアリング方式を採っています。小さな空気排出穴をいくつも開けたパイプに、わずかに口径の大きな円筒型チューブを被せ、このチューブに直角に短いピックアップアームを設置します。
移動軸となるパイプの穴からは常時電動ポンプによって空気が吹き出され、これでアームは水平直線方向と、パイプを軸とした回転で上下方向にもほとんど非接触、フリーで動くことが出来ます。
これに対してもっとシンプルに、ガイドレール上をフリクションの小さなベアリングを着けたアームベースが移動する方式があります。
ようやく肝心のTT3アームのお話となりました。この機械ベアリング方式はシンプルゆえに、優れた設計と高い加工精度が要求されるため、製品化されているアームはごく少数にすぎません。その稀有な例がクリアオーディオの2本のアームなのです。これは欧州随一、世界でも有数のアナログ機器メーカーだからこそ可能だったと言えるでしょう。
TT2,TT3はこの難問を、磨き上げた特殊ガラスチューブと高精度ベアリングによって解決しました。アームトータルでは、まさにドイツ精密機械技術の粋を見るような完成度の高さです。
これを使いこなしていくことは、大きな歓びをもたらすに違いありません。そして何よりも、他では得難い音世界を得ることが出来るのです。
通常のアームとは取付けが少し異なり、3本のビスで固定します。
レコードを置く際、本体ブリッジ部を跳ね上げますので高さ方向は少し寸法が必要ですが、回転動作しないので占有面積は小さく、取付けは意外と簡単です。
基本取付け寸法は上の2枚目の写真をご覧頂き、必要な寸法が取れるかをご確認下さい。
サイズ: 約W260×D50×H100