2023年01月03日
VERTERE MG-1 PKG Mk2
只今、
VERTERE ヴァルテレのアナログ・プレーヤー
MG-1 PKG Mk2 を期間限定で試聴展示していますので、どうぞ聴きにいらして下さい。
違いの分かるオーディオファイルの間ではすでに高い評価を得ているこのプレーヤー、透明感あるアクリル材の本体はひと目でそれと分かるインパクトがあります。
設計者のトラジ・モグハダム氏はROKSAN 時代には本体に木質系素材を使用していましたが(RADIUS 5 ではクリア・アクリルを使用)、VERTERE では最初からアクリル材を採用しています。
アクリルは硬度,比重,内部損失,安定性など物性や加工性などの点でプレーヤー・キャビネット素材として優れるため、長らく用いられてきました。現在においてはキャスト成型などでかつてより良質、かつ高い精度が得られるようになったことも理由のひとつでしょう。
MDF などに比べて高い加工精度が出せるアクリル材は、マルチレイヤー構造で高度な加工を要求するVERTERE プレーヤーには必然であったのです(金属では重くなり過ぎてこの構造は実現不可能だったでしょう)。
試用したのはクリア・アクリル仕様のMG-1 PKG Mk2 CL。
3ピース構成の各レイヤーやそれを支えるダンパーなどがはっきり見えるスケルトン仕様はブラック仕上げにはない魅力があるのがよく分かりました。
特徴的な本体に勝るとも劣らず重要な役割を演じているのが、
SG-PTA トーンアーム。
アームは何となくプレーヤーの付属品というイメージがいまだにありますが、実は本体と同等以上に音質に大きな影響を与えるパーツです。
MG-1 PKG Mk2 でもアームへの力の入れようは本体と全く同様、ROKSAN からの伝統であるユニピヴォットを採用したうえで、更に独創的なトーンアームに仕上がっています。
そしてモグハダム氏といえばこの極細センタースピンドル。
レコードはスピンドル・キャップをしてプラッターに載せますが、載せた後はそのキャップを外してプレイ。レコード盤はセンタースピンドルには直接触れない工夫です。
カートリッジは同じくVERTERE のMystic MC。これがまた、優れモノ!
遊び心でモーター近くに小さなLED ライトが付いていて、背面のスイッチでON/OFF 出来ます。
音質とは関係ありませんが、クリア・アクリル仕様ではこの光が本体全体に行き渡り、少し暗くした室内ではなかなか素敵な眺めが楽しめます。
とくに試聴用の高音質盤などではなく、敢えて身近にあった普通の盤で聴いてみました。
①井上頼豊/日本のチェロ曲半世紀 ②シモーネ/アルビノーニ 協奏曲集 OP.5
まず、ちょうど聴き始めていたチェロ独奏盤で、我が国のチェロ奏者の草分け、井上頼豊による邦人作品集①。これはいつも聴いているプレーヤーでも録音の良さが分かっていましたが、VERTERE で聴くと弦のうなりでより一層リアリティが増し、静けさも深まって、最初からVERTERE の実力に納得。
店主好みのイタリア・バロックの弦楽合奏②は清々しく天にも昇る心地良さ。
③P.アンゲラー/ヨゼフ・ランナー ワルツ&ギャロップ集 ④ブーレーズ/ドビュッシー 交響詩「海」
では先日聴いた際に音質上今ひとつと感じたオーケストラ録音③ではどうかと思って聴き直したところ、これがちっとも悪くなく、あれ? これなら演奏を楽しむことが出来ます。具体的には何となく耳障りな響きが付きまとっていたのが感じられなくなったためのようです。
④はブーレーズが米COLUMBIA に入れた初期の録音。変幻自在、いつも聴こえないような楽器が活きて、イギリスのニュー・フィルハーモニア管弦楽団を振っていますが実に多彩な音色に驚きます。英国盤だったせいもありますが、米コロンビア録音の硬さもあまり気にならず、後年のブーレーズにはないヒューマニティを感じました。
⑤シルヴェストリ/ショスタコーヴィチ 交響曲第10番 ⑥シッパース/バーバー作品集
嬉しくなって、最近入手して楽しみに取っておいた稀少盤⑤を聴くことに。
鬼才シルヴェストリが国際級の名声を得てから故国ルーマニアのオーケストラを振った演奏で、知る人ぞ知るライヴ録音。
ライヴ収録のハンディキャップを超えて冒頭の低弦の動きがよく伝わります。爆発的なフォルティッシモでも多少頭打ちになるものの破綻せず、しっかり聴かせてくれます。この人の独壇場である快速パッセージ、第2楽章と第4楽章主部は圧巻。とくに4楽章のアレグロは世界最速ではないかと思われるほどの速度で疾走するので再生が甘いと響きが混濁しつまらない演奏に聞こえますが、そこはMG-1 PKG Mk2とMystic MC、強奏でも細部が潰れず鮮明に再現して驚異的な合奏を伝えます。
⑥はVERTERE の輸入代理店、タクトシュトック(指揮棒の意)の庵氏が愛聴するバーバー作曲「メディアの復讐の踊り」(トーマス・シッパース指揮ニューヨーク・フィルハーモニック)、レコード棚から引っ張り出してきました。
サミュエル・バーバー(1910-81)はあの「弦楽のためのアダージョ」を書いた現代アメリカの作曲家。伝統的な作風で確かなオーケストレーションに裏打ちされた管弦楽作品はいずれも聴きごたえがあり、なかでも「メディアの復讐の踊り」は効果的で見事な1曲。
成る程、久々に聴きましたが庵さんの言う通りシッパースの卓越した腕前が十二分に発揮された名演で、MG-1 PKG Mk2 によって最大限に活きるレコードと言えるでしょう。ニューヨーク・フィルが若き指揮者の棒にぴったりついて第一級の合奏を繰り広げているのが手に取るように分かります。
あのバーンスタインがバーバーの作品をほとんど録音しなかったのは、彼の録音に一目置いていたのではとも思わせました。
ヴァルテレのプレーヤーは通好みでセッティングや取り扱いが難しいと思われている方もいらっしゃいますが、MG-1 PKG Mk2 はその点では全く心配ご無用、安心して使えるプレーヤーです。
アームまで一体パッケージとなっているため組上げが楽で、プラッターやカートリッジを取り付け、アーム周りのセッティングをひと通り行えばすぐに使い始めることが出来ます。
一方、さらに踏み込んだセッティングにも応える懐の深さは上級オーディオファイルをも唸らせるものを持っています。まさに使い甲斐のある1台と言えるでしょう。
VERTERE MG-1 PKG Mk2
https://www.maestrogarage.com/product/4011
https://www.maestrogarage.com/product/4278