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2016年10月16日
 

 
御茶ノ水で開催された「東京オーディオベース2016」に行ってきました。
 
今回は俄然アクセスが良くなり、アナログオーディオフェアや真空管オーディオフェアでお馴染みの損保会館斜め向かいにあるシティーホテルでの開催ですので、ずっと気軽に向かうことが出来ました。
ただ、初めての会場なので、期待すると同時に不安もないとは言えません。
ホテルは事前に地図で確認しておいたのですぐに分かりました。
ただ入り口は、実は帰り際に初めて分かったのですが、ホテル玄関から入るのではなく、二階へ直通の外階段があり、これを上がって入るとエントランスからスムーズに入ることが出来るのでした。
ホテル正面玄関から入るものと思い込んでいた私は(10mほど前を歩いていた人も同じでしたが)、何の案内も無いため困惑、少しウロウロしてからとにかく階段を上って何とかエントランスを見つけることが出来ました。
始めから苦言で恐縮ですが、確かに大きめののぼりがはためいてはいましたが、外階段入り口にもう少し分かり易いサインがあるといいと感じました。
 
内装はきれいな建物で、少々迷路のような構造ではあるものの、各室が完全に独立していてドアも遮音の良さそうな重たいもので、試聴に集中出来る環境です。
各メーカーの出展スペースはこの階(3階)に集約されており、まずは楽しみにしていたアポロン・インターナショナルのブースへ。
ここで中心となるのはフランスのメーカーYBAで、専用ブースでまとめて聴くことの出来る機会は久しぶりではないでしょうか。
アンプ類やCDプレーヤーはYBA、スピーカーはDYNAUDIOとYG Acoustics、アナログ・プレーヤーはドイツAMAZONのAMAZON 2 、そして、カートリッジはZYXの新製品Ultimate 100 が初お目見えです。
デモを行うのは、大の音楽ファンである営業担当の中村氏です。

CDでは、YBAの独自技術であるブルーLEDによる「パラドックス方式」を採用したCDプレーヤーSignature CD を使ってその方式の優位性を実際に確かめるべく、CDドライブ内にあるブルーLEDを黒いシールで覆って無効とし従来式のレーザー読み取りを行った時と、ブルーLEDを活かしてパラドックス方式で読み取りを行った時とで音の聴き比べを敢行。分かり易い女性ヴォーカルで聴き比べましたが、意外にはっきりと差が出て、パラドックス方式の有意差が認められました。
今までこの方式を搭載していたのはトップ機のSignature CD でしたが、今回新たに発売となったGenasis CD4 への採用で一気に身近になりました。CDプレーヤー自体、特別に高価なものは別として、なかなかその気にさせる製品が少ないなか、これはひとつ魅力的な新製品であるのは確かです。


YBA Genesis CD4
 
レコードでの試聴では、まずマイルス・デイヴィスの名盤「Somethin' Else」。トランペットの息遣いがいつにも増して生々しく聴こえたのは、新しくカーボン・カンチレバーを備えたZYX Ultimate 100 によるところが大でしょう。そうそう、それと、フォノイコはYBAの新製品、バッテリー電源をもつPH1 で、S/Nの良さはこれに負うところも大きかったはずです。
他にもオランダ(だったかな?)のプライヴェート・レーベルの女性ヴォーカルと、ちょっと珍しいスイスのチェロ奏者、アンリ・オネゲル(あのアンセルメの指揮した時代のスイス・ロマンド管主席)によるバッハの無伴奏チェロ・ソナタが印象的でした。
 
次は、これも楽しみにしていたAUDIO DESIGN
気持ちの良いほどにストレートな社名のこの工房メーカーは、設計を行う大藤 武氏がほぼ一人で運営しています。
今年、新しく発売となったプリアンプ、DCP-240 とパワーアンプは代表的モデルのひとつ、DCPW-200。スピーカーはいつもの背の高いDYNAUDIO Confidence C4 です。
PCによるハイレゾ音源で聴くストラヴィンスキー「春の祭典」ではパワーアンプの3,000 以上というダンピングファクターが奏功してでしょう、崩れることを知らない大太鼓の一撃は、爽快の一言。
もうひとつ、DECCA録音の、ラドゥ・ルプー(ピアノ)&プレヴィン指揮するロンドン響によるグリーグのピアノ協奏曲では、オリジナルマスターテープを聴くようなダイナミックレンジをもって当時の名録音が再現されました。私も昔から愛聴してきた名盤ですが、日本ビクターによる新しいマスタリングはレコードで聴くのとはまた違った魅力を引き出しているようです。
いずれも半導体アンプのメリットを最大限生かしたAUDIO DESIGNならではのサウンドには、全くブレが無いのが確認出来ました。
 

AUDIO DESIGN DCP-240
 
TRIODEはつい先日のインターナショナルオーディオショウでも聴きましたが、分かり易い山崎氏のデモで、大きな部屋はここでも大盛況。
新製品の大物、SPENDOR SP200 は、他ではなかなか聴くことの出来ない新しいブリティッシュサウンドを聞かせてくれました。
でも一番記憶に残ったのは山崎氏の真紅のジャケットかなあ。
 

SPENDOR SP200
  
DYNAUDIO JAPAN のブースではちょうどオーディオライターの和田博巳氏によるデモが行われており、新しいContour (コンター)シリーズが初お目見えとなりました。
いつもながらスマートで洗練されたトールボーイのContour 30 で、70歳超での最新アルバムという、ジェフ・ベックのプレイがフルヴォリュームでかかりましたが、年を感じさせない切れの良く過激なギターには驚きました。さすが、今でもバンドで弾く和田氏はソース選びが一味違います。
アメリカのスピーカーのように熱くなり過ぎはせず、でも音楽を十二分に楽しく聴かせてくれるContour 30 はホント、頼りになるヤツです。
 

DYNAUDIO Contour 30 (右)
  
ここまで来て腕時計を見ると、もう終了まであまり時間がありません。ブース数がそう多くはないので余裕で回れるかなと考え、少々各部屋で時間を取り過ぎてしまったようです。
最後にチーム「フォース」ブース(取り扱いブランドは、SAEC, IKEDA, MUTECH, tangent, ProAc, ROTEL など)へお邪魔しました。
小気味良い音でレコードをかけているのは、ポーカロラインの村山氏。このオーディオショウの運営室長でもあります。
アナログ・プレーヤーがVOXOA T50 、インテグレーテッドアンプがROTEL RA-1520(失礼、多分)、スピーカーがtangent SPECTRUM X5 。3点一式の総額が30万円を切るシステムですが、いやいやどうして、たっぷりした低音こそ不足はするものの、くっきりと音楽を描写して積極的に聴かせる力はスピーカ―の大きさ,価格を大きく超えてなかなか魅力あるお買い得システムと感じました。
 

tangent SPECTRUM X5
 
最後帰りがけには、1階物販コーナーに出展していたCDレーベル、FONTEC フォンテック(この会社も当店と同じく荻窪にあります)のところでつい大好きなジャン・フルネのCDを9枚も買い込んでしまいました。これも大きな収穫!
 
2016年10月02日

 
今年も恒例の東京インターナショナルオーディオショウに行ってきました。
週末の土日は極力開店したいので、初日の平日・金曜日に行きましたが、今年は何となく例年に比べて人の入りが多いように感じられました。 
印象に残ったところをかいつまんでご報告。

いつもと同じく一番上(7階は、はしょって)の階から回るのですが、ほぼ毎年ブースの位置は決まっていて、エレベーターを降りたすぐ脇はフューレンコーディネートです。
去年も最初に聴いたスピーカーがピエガの超大型スピーカーMaster Line Source で、今までのスリムで清楚なイメージとかけ離れたその規模に驚きましたが、今年最初に迎えてくれたのはその弟分、Master Line Source 2 でした。
 

 
これは実験的とも言えるフラグシップ機をずっと現実的な大きさ(と言っても高さは176cm)にまとめたもの。これなら日本でも大きめのリヴィングなら十分使いこなせるでしょう。
但し価格はペアで1千万円也と、少し(?!)高め。それでも上級機の半額以下になってはいます..。
音のほうは去年のMaster Line Source より親近感を持てるもので(去年は音が部屋の大きさに収まり切れなかった嫌いがありました)、凛として、かつ繊細極まるもの。中高域は2ウェイのリボン型で、しかもダイポール方式(音が前・後両方に放射)ですので、ちょうどエレクトロスタティック・スピーカーのような音感。少しひんやりした感触は、北欧の録音には特にマッチしそうです。



この隣にもう一組、やけにスリムで背の高いスピーカー・システムが並んでいました。オーストリアのブロッドマンの新しい上級機(実はこの上にもう少し大きなJB 205 があります)、JB 175。こちらはずっとスリム(幅23cm!)なのに高さはピエガとあまり変わらぬ162cm。大きな地震が来たら倒れないかなと心配なくらい。普通の人が見たら高級なつい立だと思でしょう。
ブロッドマンはかつて、あのピアノと同じベーゼンドルファー・ブランドで出ていた製品の流れを継ぐもの。ピアノ・ソロでデモが行われたのは確信犯的、恐らくピアノを鳴らしたらこの右に出るものは無いでしょう。十分な音量で鳴らした時のJB 175 は、まさに実物のピアノが目の前で実演されているかのような錯覚を覚えました。
こちらはウォルナット突板仕上げで予価710万円/ペア。

どちらも高価な分、趣味性も半端ではなく、正確なトランスデューサ―などは端から目指してはいません。それぞれのメーカーの特質を突出して表わした作品であることを実感しました。
ですからどちらも強烈なほどに主張が強く、高度に練り上げられた独自の持ち味こそが最大の魅力で、聴き手を選ぶものであるのは間違いありません。
が、使い手にピッタリ合えば、何物にも代えがたいものとなるのも確かです。
 

 
太陽インターナショナルのブースには、ステラから輸入を引き継いだドイツ、ブリンクマンのターンテーブルが展示されていました。
ブリンクマンには現在5つのモデルがあり(うち3つはベルトドライヴ)、以前輸入されていたOasis のひとつ下位に位置するBardo というスリムな機種がトップバッターに選ばれました。価格はOasis の約半額、816,000円。ブリンクマンお得意のダイレクトドライヴです。これはなかなか魅力的ではないでしょうか。
アームにはTonearm10.1 (385,000円)が用意されています。
 

 
1階降りて、まずお馴染みのトライオードのブースは満員!
同社真空管アンプの人気はいつもながらで、今回はそれに加えてトライオードが輸入する英国スペンドールに久々の新作、しかもフラグシップ機の登場とあっては当然でしょう。
その新作、SP200 は初めての大型フロアスタンディング・タイプ。でも大型フラグシップと言っても先のピエガやブロッドマンの後に見るとずっと身近で、ホッとしました。
音のほうもやはりどこかホッとする、いかにも管球アンプと組んだアナログ・レコード再生に似合う人肌のサウンド。当たり前ではありますが、当店で使っている同社のSP1/2R2 の延長上にあることが確認出来ました。
 

 
その並びのハイエンド(輸入代理店の名前です)のブースには、店主お気に入りのドイツ、ランシェ・オーディオのスピーカーがあります。
デモしているのはいつものNO.5.1。いつもながらイオントゥイーターは清々しくも楽しいサウンドで魅了します。
私どもで扱っておりますので、ブースで聴いてお気に召した方は、どうぞお問い合わせ下さい。
 


 
4階に降りて、ラックスマンからは新しい管球モデルが2機種登場。
インテグレーテッド・アンプのLX-380と、CDプレーヤーのD-380。このデザインは、昔からラックスを知る方にとっては「これぞ永遠のラックスマン・スタイル」というところでしょう。本当に魅力的な機器達です。
このブースも入り口から入ることさえ大変なくらい、いつもながら満員の盛況です。

さて、ガラス棟をひと回りした後は空中橋を渡ってD棟へ向かいます。
いつも大きく立派な部屋でデモしているのは、アクシス。
入り口を入ると、おや、どうやら特別ライヴ?なのか会場で歌うヴォーカルが聴こえてきます。



会場に入ってみると、音の主はシン・ゴジラのような大きなスピーカー、ウィルソン・オーディオのAlexandria XLF でした。
ソースの質が良いのはもちろんですが、まさにそこで歌手が歌っているような等身大の再現を、細部の表現も申し分なくプレイバックしてみせたのには、このスピーカーなら当然とは言うものの、改めて感心。
ウィルソン・オーディオは創業が'73年ですので、米ハイエンド・スピーカーの草分けとして本当に息の長いマニュファクチュアラーで、現在もなおデイヴィッド・ウィルソンが率いて世界トップクラスの製品を生み出し続けているのには感服します。
店主もかねてから最も信頼を置くひとつです。

いつも最後の時間はヨシノトレーディングのブースで過ごします。
今回からデモを担当するのはヴェテラン営業マン、畑山氏です。
 

 
丹精込めて設計した今のモデルがマイベストだ、と言わんばかりに、めったに新製品など出すことのない、いや、出す必要もないEARですが、久々にフルモデルチェンジのCDプレーヤーが登場。デジタル機器に関しては、ほんの少しばかり早目のリニューアルが必要ということでしょう。
このAcute Classic は、ショウに先駆けて既に当店で試聴会を開催済みで、お聴きになった方々に大変好評でしたが、ほとんどの方にとっては初お目見えとなります。
今回はこのCDプレーヤーが主役ですので、いつもはアナログ・レコードしかかけない(というより、CDプレーヤーの展示が無い)、ヨシノトレーディングとしては異例の(?)CDによるデモが中心となりました。
とにかく「音楽」を聴かせてくれるCDプレーヤーとしておススメなのはもちろん、DACとしても最高。詳細は製品ページをご覧下さい:
http://www.maestrogarage.com/product/2288
2016年09月19日
 

 
先月に続き、第11回「カートリッジ会」が行われました。

持参頂いた盤の中に名盤、貴重なアンドレ・クリュイタンスのベートーヴェン「田園」初期赤盤があったので、これを中心にいくつかのカートリッジを聴いていこうということになりました。

手始めに、メンバーのお一人が最近入手した懐かしいGOLDBUGの初期製品、Clement で再生。
その後に、GOLDBUGの製作者に関連があるというDENONのDL103SL を比較試聴。両者の差異について話に花が咲きました。

次に、以前印象に残ったMICROの初期カートリッジ、M-2000/S で聴いてみたいというリクエストに応じて試聴。大きく武骨な外観とは裏腹に、今回もバランスの取れたMMらしい円満な音を聴かせてくれました。
それなら少しマイクロ特集をやりましょう、ということになり、その後マイクロの、
LM10 (MM)
VF-3200/e (MM)
LC-40 (MC)
とたて続けに試聴。中でも比較的廉価なVF型(MI型)としては立派な再生で聴かせたVF-3200/e に賞賛が送られていました。
 

(写真はAUDIO HERITAGE から拝借)

最後にもう一枚、ドイツ・グラモフォンの初期盤で、オイゲン・ヨッフムのブルックナー/交響曲第5番~第2楽章をじっくりと、毎回人気のADC TRX-2 (MM)とTechnics AT34(MC)で聴いて締めくくりました。
 
今回もありがとうございました。
2016年08月29日
 
 
 
トーレンスの往年の名機のひとつ、TD521 を神奈川県のお客様に納品させて頂きました。
大変状態の良い品物で、確認にお越しになったお客様はひと目でお気に入り下さり、購入を決定されました。

アームにはSMEの現行ロングアーム、M2-12 を載せるためにアームボードを製作。
現在、オーナーのもう1台のプレーヤー、ノッティンガムのスペースデッキとともに活躍しています。

ご用命ありがとうございました。
2016年08月13日
 

 
話題の「シン・ゴジラ」、観て参りました。

子供の頃から繰り返し観て、伊副部音楽のオスティナートのように刷り込まれてきた第1作の白黒「ゴジラ」が唯一無二の「真・ゴジラ」だと信じてやまない店主ですが、ここ2作ほどの米国ハリウッド製ゴジラの余りの失態に、やはりゴジラ映画は日本で作らないとダメなんだ、との確信をもつようになっていました。
かと言って、ハリウッドへ行く前の国産ゴジラも完全に行き詰まりを見せていましたので、今更また日本で新しいのを作ってもどうなのかなあ、などという思いがあって、新しいゴジラ上映開始のニュースにもそれほど惹かれず、そのうち行ってみようか、程度でした。

それが、少し前に相次いでお客様や友人など何人もから「すごく良かった」という感想を聞いたことがきっかけになって、家族で観に行くことにしました。
どうせなら一番大きい画面がいいと、まずIMAXを狙ったのですが、これは気がついた時には既に遅く、予約でチケット完売。それならと新しい新宿・歌舞伎町TOHOシネマズ新宿の一番大きな上映室(スクリーン9、約500席/8×19.2m画面)に予約。

結果、ゴジラにはちょっとうるさい店主も90%納得(これはほぼ満点に近いという数値)、予想を超えて大満足でした。
実は並んで観ていたカミさんのほうがいつも辛口で、まず何を見ても「まあまあ、だね」というのが口癖ですが、今回は一言「面白かったね」。これはかなり高評価と受け取っていいと思います。因みに、もちろん息子は大喜び。

何が良かったって、やはり初心に帰った第1作ヘのリスペクト。
それと何といっても徹底的にリアリティを追求した映像。しかもこれも、第1作のミニチュア模型による細部の拘りがちゃんと継承されています。自衛隊の全面協力もお決まりかつ必須。
そして個人的に嬉しかったのは、オリジナルの伊副部音楽ヘのリスペクト。部分的には本当のオリジナル・サウンドトラック(モノラル)を使用してまでの拘りようには頭が下がりました。

ストーリーについてはネタばれはしたくないので細かくは申しませんが、とにかくリアルに、「今、ゴジラが現れたら日本はどうするだろう」という設定で徹底的にドキュメントドラマ仕立てで余計なエンターテイメントを排したことが功を奏していると思います。
強いて言うと、昔の映画のように強烈な個性でゴジラに負けないほどのインパクトを与える俳優(例えばオリジナル・ゴジラの芹沢博士役、平田明彦)がいないのは歯がゆいところですが、致し方の無いところでしょう。

総監督の庵野秀明は「エヴァンゲリオン」、監督の樋口真嗣は「進撃の巨人」の監督とのことで、アニメーション界の逸材たちがフルCGと割り切って全力で取り組んだことがよかったのでしょう。
店主には今まで縁のない新世代のクリエーター達ですが、後で庵野は「風の谷のナウシカ」で巨神兵のシークエンスを担当したと聞き、なるほどと納得。

興味のある方、まだ観に行かれていないなら、映画館へGO!
2016年08月09日
 

 
お客様による恒例のカートリッジ会も、記念すべき10回を迎えました。
ご本人たちはそんなことには関係なく(私が勝手に回数を数えています)、いつもどおりカートリッジとレコードを持参。お土産にお持ち下さったお菓子をつまみながら情報交換、話は弾みます。
 

 
今回はメンバーの方が私どもから購入のレコード、「ボビノ座のバルバラ'67」というシャンソンのライヴ録音盤の聴き較べから始まりました。
たまたま入荷したステレオ盤とモノラル盤両方ともお求め頂いたので、それぞれGoldring ElectroⅡ とAKG P25MD/35 (ステレオ)、Audio-technica AT33MONO (モノラル)で聴き較べ。
この盤、録音はタイトルにあるように1967年ですからもうステレオ時代のレコードですが、フランス盤しかないからでしょうか、手に入る多くはモノラルで、ステレオはかなり稀少。今回の入庫も探してようやく入ってきたものです。
その分少し高いので、もしステレオ盤だけで十分なら、モノラルのほうはキャンセルか、という気持ちで聴き始めたのですが、ピアノ,アコーディオン,ベースというトリオにヴォーカルという構成からしてモノラルも捨て難く、やっぱり両方お買い上げ、ということになりました。ありがとうございます。
 

 
次は古い米COLUMBIA(日本コロムビア盤)のアンドレ・コステラネッツがニューヨーク・フィルを指揮するエネスコの有名なルーマニア狂詩曲第1番。貴重な10吋フラット盤(MONO)で素晴らしい保存状態、ヴェテラン・メンバーのコレクションです。
コステラネッツはソ連のサンクトペテルブルク出身、アメリカに亡命後はご存じのように自身のオーケストラを振ってライトクラシックやイージーリスニングの先駆けとして活躍しましたが、このレコードのようにメジャーオーケストラを振って本格的な録音も行っていました。
これがまた録音も含めてなかなかの演奏で、引き締まったNYフィルを自在に操って民族色豊かな演奏を聴かせてくれました。カートリッジはAudio-technica AT33MONO 。
 

 
次はMICRO M-2000/5 とAudio-technica AT-160ML という2つのステレオ・カートリッジでステレオ初期のクラシックとジャズの名盤を。
DECCA (LONDON)のアンセルメ/展覧会の絵と、CONTEMPORARY のアート・ペッパー/Art Pepper Meets The Rhythm Section、どちらも名盤ですね。
とくにマイクロのカートリッジは'60年代の製品(!)ながら驚くほど生彩感あふれるサウンドを披露して(オーナーも含めて)一同ビックリ。マイクロはカートリッジのイメージはあまりありませんでしたが、認識を新たにしました。
 
今回は、以前たまたまメンバーの1人と当店で会って話が合い、次のカートリッジ会に参加をお誘いしていたお客様が仕事を終えてから駆け付けて下さって、後半に参加、ちょうど10回目の新メンバー(?)となりました。
2016年08月03日
 

 
先日、仕入れ先の営業の方が、英国 IsoTek 社のクリーン電源 EVO3 AQUARIUS(アクエリアス)を持参してくれました。何だか、のどの渇きを癒してくれそうな名前です。
立派なプリメインアンプか小型パワーアンプくらいの大きさがあって高級感漂い、ラックの後ろに隠しておくのはもったいないくらいのコンポーネントです。

「CDかアンプあたりをここに繋いでみませんか?」と言うのですが、
[え?今さらクリーン電源は目新しくもないし、ラックの後ろに潜るのメンドクサイしなあ..](心の声)
と早速持ち前のものぐさが顔を出し、一瞬躊躇していると、それを見透かしたようにすかさず、
「では、簡単に効果を試すことが出来るので、ちょっとやってみましょう」
と、何やら小さな箱を取り出します。
「まず、この電源アナライザーを壁コンセントに挿してみます」
でんじろう先生のビックリ実験を見守る子供のような気がしてきました。
するとビックリ、アナライザーには小型スピーカーが仕込んであり、そこから盛大にピーピー,シャーシャーとノイズが出まくり、加えてラジオ放送もかなりはっきり聞こえます。
家庭用電源にのった可聴帯域のノイズを強調して分かり易く出しているのでしょうが、それはそれはひどいものです。
当然ある程度のノイズはのっていると分かっているつもりでも、それを音にしてはっきり聞かされてしまうと、そのままオーディオ機器を繋いで「ああ、いい音だ」と聴いている自分が恥ずかしくなってしまいます。
音だけではなく、アナライザーのパネルには小さなディスプレイがあって、ノイズのレベルを 1000 をMAXとして表示します。困ったことにうちの壁コンセントは800台、繁華街のマンションの1階ですから予想はしていたものの、うーんかなりひどい! また、試しに作業用の数メートルある長い電源タップに繋いでみると、1000 超えのオーバー表示、最悪の状態です。

さて、ここからが見せ場です。
アクエリアスを先ほどの壁コンセントに繋いで、今度はアクエリアス背面にある出力コンセントにアナライザーを挿してみます。
あれ? ちゃんと繋いだ? アナライザーのスピーカーはうんともすんとも言いません。先ほどはあれほどうるさくわめいていたのに、全くの無音です。
「裏のスイッチでも押してるんじゃないの?」と冗談半分に言ったものの、誰でも分かるその効果は絶大、のようです。

数値表示も数十からほぼゼロのあたりを示し、確かに効果の大きさがうかがわれます。

既に数多く存在するクリーン電源,電源フィルターなどもこのアナライザーを試すとそれぞれ効果は確認出来るものの、ここまで低減されるものは無い、とのことでした。

IsoTek は2001年創立とのことですので、まだ比較的若いメーカーですが、独自のフィルター技術を武器に、彼らの高性能オーディオ用電源コンディショナーは世界的にも高い評価を得るに至っています。
あればいいのは分かっているけれど、そのうちにね、という方、安くはありませんが、これはご検討頂いていいかもしれません。

それにしても、あの電源ノイズ・アナライザー(IsoTek製ではありません)、欲しいなあ。
2016年07月15日
 

 
クリアオーディオのTT3 はリニアトラッキングアームということがあり、納品には気を遣う製品です。
今回お納めしたお客様はすでに私どものお得意様ですが、ご自身でプレーヤー側など万全な準備の下、取り付けを完了されました。
プレーヤーはTechDAS のAir Force Ⅲ、現代最先端のアナログ機器同士の注目の組み合わせですが、両者のデザイン,仕上げがぴったりマッチして、写真のとおり(小さくて恐縮ですが)、まさに純正のごとく見事なまとまりの良さです。
もちろん肝心の音も素晴らしく、動作も完璧で、まずはご満足とのこと、誠にありがとうございました。
2016年06月22日
 
ENTRE EC-25LP
 
お客様自主開催による恒例の「カートリッジ会」、第9回を迎えました。
若手メンバーの方は引っ越し先の埼玉県からのご参加です。
今回もお二人が持ち寄ったレコードを中心に、それに相応しい、或いはこれで聴いてみたい、というカートリッジを選んでかけるやり方で進めました。

往年の名盤、シルヴェストリ指揮の「新世界より」、本国共通のスタンパーによるプレスの国内モノラル初期盤は、モノラルのENTRE EC-25LP で。
実にフレッシュで勢いのあるライヴのような音楽がスピーカーから奔流となってほとばしる様は壮観! この録音で西欧に打って出たシルヴェストリの意気込みが、ひしひしと感じられる再現です。レコードとカートリッジの息もピッタリ合っていました。

Victor MC-1

次にジュリアード弦楽四重奏団とレオン・フライシャーによるブラームスのピアノ五重奏曲。
これはオリジナルの米EPIC モノラル盤とステレオ盤が揃っていたので、それぞれ先ほどのENTRE EC-25LP とVictor MC-1 とで聴き比べました。
モノラルは先ほどの新世界同様、骨太の音楽が激流のごとく押し寄せる気迫がとにかくすさまじく、ステレオの力みのない自然な流れとは、刻まれている音も、またそれを拾うカートリッジもそれぞれの特色が混然一体となって、同じ録音でも違った聴こえ方をすることがはっきり分かりました。



LONDON国内初期盤のボスコフスキー指揮ウィーン・フィルによるウィーン音楽集「PHILHARMONIC BALL」はDECCA録音の冴えた響きを聴くべく、DENON DL103SL をチョイス。
ポルカ「狩」での銃発砲の効果音はびっくりするほどの生々しさで、一同思わず飛び上がりました。

ちょっと珍しいものということでお持ち頂いたB&O MMC4000 では、巌本真理弦楽四重奏団とランスロによるモーツァルトのクラリネット五重奏曲を。中域の充実した密度の高い室内楽を堪能しました。



最後に、魅力的なドイツ人(?)女性が載ったジャケットのことがさっきから気になっていた店主が、持ち主のメンバーにリクエスト、「ドイツ・アルプスの音楽」をFR のPMC-1 で鑑賞(写真が小さくでゴメンナサイ)。超絶技巧のヨーデルを聴きながら、もっぱら店主はジャケットに見入っていました..。

あっという間に4時間。また素敵なレコードとカートリッジ、持って来て下さいね。
2016年06月12日



秋葉原(というか御茶ノ水)で開催されたアナログオーディオフェア2016 に行って、先ほど帰ってきました。
いつものごとく出足が遅れて会場には昼過ぎに着いたのですが、今年は去年に比べてフロア数で2倍の広さになったためか、大幅に出展社が増えたにもかかわらずひどい混雑は少なく、比較的ゆっくりと見たり、聴いたり、訊いたりすることが出来ました。
但しそれは今日の午後だったからだったらしく、昨日、土曜日はまだ非公式な数ながら今日の1.5倍以上の入場者があったようで、かなり混雑したそうです。

いつもは大体一番上の階から見ていくことが多いのですが、今回は何となく一番下2階からスタート。
この会場は広いホールに小さな出展社が露天市のように集まっていて、個人規模のメーカーが大多数なだけに個性的なところが多く、個人的にも関心の高い会場です。

ゾノトーン(前園サウンドラボ),グランツ(ハマダ電気)、ベルドリーム(フェア主宰)はいつもお馴染み。
ロッキーインターナショナルに高級そうな黒いターンテーブルが置いてありましたので、「だいぶ前にアナウンスのあったAcoustic Signatureのプレーヤーはどうなりましたか?」と訊くと、最近発売を開始したそうで(5月2日)、まだWebサイトサイトは準備中とのこと。でもひと通り5,6機種の国内ラインナップがあり、30万円台から100万円超まで揃っています。展示してあったのはSTORM MK2 という高級機で価格は95万円也。
また単体トーンアームもあり、精度感のある9インチのTA-1000 (下から3番目)が22万円と比較的こなれた価格であるのは嬉しいところです。
またロッキーインターナショナルからは新規に米Soundsmith サウンドスミスのカートリッジが発売されることが決まったそうです。こちらも詳細が決まりましたらお知らせします。

国産真空管アンプの雄、ウエスギは後継者にバトンタッチ、代表であり設計者の藤原伸夫氏にお会いしました。すでに創業者のスピリットをしっかり受け継いで新たな一歩を確実に進めているのは周知のとおりですが、藤原氏も既に長い実績をもつヴェテラン・デザイナー、実は店主のかつての先輩社員にあたることもあり、個人的にも期待大なのです。
今後本格的に扱いをしてまいりますので、新生ウエスギ・アンプもよろしくお願い致します。

MASTAZ マスタツ・オーディオプロジェクトはかねてから注目していた新しいブランド。工業デザイナーである増田泰彦氏が主宰するオーディオラックを中心としたメーカーです。
ラックの実物を初めて拝見しましたが、しっかりしたつくりでもちろんデザインも秀逸、使い易く、そして嬉しい価格。これも扱いを開始しましたので、追々ご紹介させて頂きます。

もうひとつ、ラック関係で、これも前から気になっていたものですが、margherita マルゲリータというデザイン・ファニチャーで、レコードやCDのためのラック,ボックス、本棚,書類・ファイル棚,引き出しからデスク,チェアーまで実に様々な製品を手掛けています。母体が建築設計事務所なのでデザインが優れているのもポイント。天井から床まで、壁面いっぱいに設置出来るレコード棚などもあり、レコード好きは一見の価値あり。
これも追々ご紹介していきます。

4階では、トライオードが大きめのブースを使って山崎氏のデモは相変わらずの盛況。
SPEC スペックも、私が部屋に入った時はアナログでなくデジタルでのデモでしたが、アンプをはじめとする同社の製品はもちろん、輸入販売するフィンランドのスピーカー、amphion アンフィオンが北欧の空気ともいうべき(実際に嗅いだことは無いですが)実に清々しいサウンドを聴かせてくれて、去年と同じく好印象。これはおススメのスピーカーです。

既に当店のNewsでもお伝えしましたが、光電カートリッジのDS Audioは満を持して最上級機、DS Master1(カートリッジと専用イコライザーアンプのセット)を初めて展示、デモしていました。
イコライザーアンプが大型プリメインアンプ並みに大きくなってしまったため、ツートンカラーにしてスマートに見せる工夫をしたなど、開発者から伺いました。

上がって一番上の5階では、ZYXのカートリッジでまずバッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータをオランダの奏者、テオ・オロフの演奏で、その後モノラルのR100-MONO に替えて、モノラル盤のヨッフムのオルフ「カルミナ・ブラーナ」(バイエルン放送響)とスイトナー&SKDのチャイコフスキー 弦楽セレナーデ、という大変凝った音源でのデモを楽しませてもらいました。生き生きして鮮度の高い音はZYX以外の何物でもありません。アンプはソネッティア,スピーカーはプロアックと、お馴染みの構成に加えて、独アマゾンの漆黒のターンテーブルが光っていました。

中央の大きな部屋にも注目のメーカーが集結しました。
まず国内のショウ初お目見えとなったアームとターンテーブルのReed。独創のターンテーブル3C と、近日輸入が開始される伊AUDIA オーディアのハイエンド・アンプで充実したサウンドを披露(スピーカーは同室の他社と共通でソナス・ファベールのAmati)。
他にもViV laboratory,Phasemation,Aurorasound,Audio Noteなどが入れ替わりながら多くの来場者を集めていました。

Air Tight(A&M)とMy Sonicはいつもタッグを組んでデモしています。
ターンテーブルはもちろんTransrotor。スピーカーは今回YG ACOUSTICS のCarmel 2 を使用、高槻工業製300Bを積んだシングル・パワーアンプ(近日発売予定)と組んでのデモは、音離れの良さが際立っていました。
ところがデモの途中、レコードをかけ替える際に、何の前触れもなくマイソニックの松平氏が機材のところへ行って、何やら同社のMCトランスのケーブル接続をいじり始めました。
デモ中のA&M須田氏も打合せ外のことに「何をされたんですか?」と何だか訳が分からないといった面持ちで問いかけますが、松平氏のほうはそれには答えず、いたずらっ子のようにニヤリとして、音も出さずにレコードをかけ続けています。音を出そうとする須田氏を制止して、「音はまだ。少し熟成させましょう」(??) かけていたLPが竹内まりあの「ウィスキーはお好きでしょ」だったのに引っ掛けての発言です。
無音で針が載ってレコードだけが回るなか、一同?? 1分強ほど経ったでしょうか、「さて音はバーボン、それともスコッチになりましたでしょうか?」と松平氏、同じ曲を音量を変えずにそのまま再生しました。機材は全く同じなので変わるはずもないのですが、おや?不思議や不思議、少し変わったかな、ときどきちょっときつめになるかなとの感もあったのが、輪郭が少しスッキリして見通しの良い、よりストレスの無い音に聞こえます。よく聴いてみると、いや、結構変化しているようにも聞こえます。
まだいたずらっぽくニコニコしている松平氏、さて、種明かしです。実は手の中に手製のショート・プラグを2個隠し持っていて、アームケーブルの出力のところで左右それぞれ+-をショートし、そのままある時間再生することで、音声信号によるカートリッジの自己消磁をしていたのです。ああ、なるほどね、という方も多いと思いますが、オーロラサウンドなど、同じ方法で消磁する機能をもつフォノイコも存在します。
松平氏が海外のショウで出展者にこの小技を教えると、彼らがデモの際に実践、とてもウケるので喜ばれるのだそうです。向こうではゴッドハンドの松平と呼ばれるとか。
何だか面白い理科の先生の授業を聞いたようで、こちらも思わずにっこり、とても有用なワンポイント・アドヴァイスのひと時でした。
週に一回くらいやるといいそうですので、皆さんもぜひお試しあれ。これはMC昇圧トランスの出力でも同じように有効で、トランスの消磁に役立ちます。但しアクティブな機器、例えばフォノイコではダメ、回路を破損してしまいますのでご注意。
2016年05月30日
 
第一生命から第29回「サラリーマン川柳」コンクールの小冊子が届きました。
読んでみると思わず力なく笑ってしまう脱力名作も多く(店主はこういうのが好きです)、勝手にマエストロ・ガレージが選ぶ10選をご紹介します。
元々のベスト100の上の方から並べているだけで、順番はあまり関係ありません、どうでもいいですが念のため。
最後のも見てね。

(1)
娘来て
「誰もいないの?」
オレいるよ

(2)
じいちゃんが
建てても孫は
ばあちゃんち

(3)
決めるのは
いつも現場に
いない人

(4)
気を遣い
妻を目で追う
オレとイヌ

(5)
「まぁ聞けよ」
もう聞きました
5回ほど

(6)
「休みます」
新入社員の
紙対応

(7)
定年後
帰りは何時
聞く側に

(8)
「ご」を打つと
自動変換
「ごめんなさい」

(9)
ただでさえ
無礼な部下の
無礼講

(10)
地方より
創生したい
我が家庭

(番外、店主作)
妻買った
健康器具は
今物干し
(字余り!)
2016年05月23日
 
「電波新聞」といっても一般の方にとっては馴染みの無い名前かもしれませんが、電機業界ではとてもポピュラーな日刊紙で、店主もかつて大昔メーカー勤めのころには、各部署に毎朝届いて上長から順番に回し読みしていました。私なんかは最後の最後、一部切り抜きされていたりしましたが、それを課長や主任が明日の朝礼のネタにするわけです。

そんな業界紙ですから載っているのは大手の電機メーカーや部品メーカーの話題や新製品、業界や市場の動向、或いは販売店情報も大型量販チェーンなどについてですが、ここ1年半ほど、「注目の老舗オーディオ専門店」という題で全国のオーディオ・ショップを毎週1軒ずつ取り上げて紹介する記事を連載しています。
多くは地域に何店舗も構えるような大手有名店ですが、どのような経緯か、私どものような極小手(大手の反対語のつもり),超専門的個人商店を取り上げて頂けるのは有り難い限りです。

来店されたのは大橋氏と小川氏、世代は大きく異なるお二人のコンビネーションがなかなか絶妙で、こうして全国様々な店を取材しながら世代継承も兼ねて続けているのだとか。実に素晴らしいことではありませんか。
実は大橋氏は知る人ぞ知る電子工作業界(?)の大御所で、電波新聞社の「電子工作マガジン」編集長も兼ねています。
かつてのオーディオ全盛時代真っ只なか世代でもあり、つい取材を離れて熱く語り合う場面もあり、大変楽しいひと時を過ごさせて頂きました。

記事は6月3日・金曜日付の電波新聞に載せて頂きましたので、もし機会がありましたらご覧になって下さい。
2016年05月18日

お得意様愛用のCDプレーヤー、PHILIPS LHH700 の修理を行いました。

既に発売から四半世紀を経た製品ですので各部での劣化は避け難く、とくにメカニズム部分は動作に不具合が出て当然といえます。
今回の症状はCDがうまくローディングされず、かからないというものでした。

分解しドライヴメカを外してチェックすると、ローダーを駆動するベルトが4本とも劣化していましたので、新しいものと交換しました。
同時にベルトが滑らないようプーリーを清掃、ローダーがそれに沿って動くスライドロッドとガイド部分も清掃した後にグリースを塗って仕上げました。
ドライヴメカを位置調整しながら再設置、各部清掃・点検の後、動作確認すると、ローディングは力強く滑らかに動作、CDの読み取りも遅延無く完了し、まずは良好な状態です。

LHH700 はドライヴメカにスイングアーム式ピックアップをもつPHILIPS のCDM-4 を積んでいますが、多くのPHILIPS メカが既に劣化で動作不可の状態となっている中では、比較的使用時間が少なかったのでしょう、まだちゃんと動いているので、これからもしばらくの間はお使い頂くことが出来そうです。
2016年05月08日
 
レコード好き誰もが認める英DECCA盤の音の良さに関して、そのひとつの裏付けとなる証言をご紹介させて頂きます。

音元出版の「analog」誌に載った内容ですからご覧になった方もいらっしゃるかと思いますが、長年キングレコードのエンジニアを務めた菊田俊雄氏に現役当時の話を聞く連載記事の中の一部です(一部抜粋):

キングレコードと英デッカとの原盤契約が成立したのが'53年だが、、それから長年にわたってクラシック曲に関してはメタル原盤(メタルマザー)しか渡されなかった。
メタルマザーからスタンパーを作るのだが、メタルマザーはスタンパーを何枚も作っているうちに壊れてしまう。そこでテープにして欲しいと頼むのだが、音質が変わってしまうからという理由でなかなか許可してくれなかった。
そこでキングでは度々、洋楽部からテストカットのためのテープを送って欲しいと交渉を重ねた結果、やっとマスターテープのコピーを送ってもらえることになった。

菊田 「マスターテープが到着した時、レコードがあんなにいい音なのだから、より原音に近いテープはさぞかし素晴らしい音が聴けるだろうと思ったのです。しかし、予想は完全に外れ、思っていたような美音ではなかった。レコードのほうがずっといい雰囲気の音なのです。」
菊田氏のかねてからの持論は「一番音がいいのはマスターテープではなく、きちんと仕上げられたレコード盤」というものだが、デッカのレコードはまさにこれを実証したことになる。

菊田 「デッカのクラシックは全体の周波数特性を大幅に変えるようなことはしていませんが、盤の再生状況を想定してカッティングの調整はしているようです。再生針先のトレーシングを考慮して、やたらに高域を伸ばすことで発生する害のある音を防止したり、位相特性や過渡特性など単なる周波数特性以外にも配慮されているようです。
ラッカー盤にカッティングする過程でも溝の切れ味や深さで聴感的には大きく変わりますが、特性の数値上には表れることはありません。つまり職人技の範疇となります。
デッカのレコードでも単に忠実にレンジを拡げるという方向ではなく、60~10kHz位までの音を重視してきちっと仕上がるように配慮されています。要するに音楽にとって最も大切な情報が、この帯域にちゃんと入っているのです。なかなかうまい音づくりだなと感心させられることが多いですね。」

そう伺うと英デッカはオリジナルのサウンドに対する思い入れが他のレコード会社より強いように思える。
菊田 「デッカから送られてくるマスターテープにはA面の頭に必ず40~16kHzまでの信号が細かく入っていて、この帯域がフラットになるように調整してカッティングすることになっていました。マスターテープを再生する場合、1本ずつテープレコーダーのヘッド・アジマスや位相を調整してからカッティングする必要があります。私の経験ではコピーテープにまで細かくリファレンス信号を入れていたのは英デッカ以外には見たことがありません。」
デッカ・オリジナルのサウンドを少しでも変質させてはならないというわけだ。
(以上、音元出版「analog」Vol.51、「レコードの奥義を極める」から)
2016年04月03日
 
 
 
山田和樹指揮の日本フィルを渋谷のオーチャードホールで聴いてきました。
実はこのチケット、元々は弟が購入(彼は大の山田和樹ファン)、楽しみにしていたコンサートだったのですが、急用が入り泣く泣く断念、棚ぼたで譲り受けたものです。

現在このコンビはマーラー・ツィクルスを進行中で、これは去年から番号順に年3曲ずつ、計3年かけて全9曲を演奏する長期プロジェクトです。彼の初めてのマーラー・ツィクルスですから、自分の成長とともに進めていきたいという思いがあってだそうです。
今年は2年目ですから4,5,6番を、1~3月に月1曲のペースで演奏会が開かれました。
私が聴いたのは今年の最後、交響曲第6番で「悲劇的」の通称で呼ばれる曲。マーラーの交響曲としては声楽も入らず、4楽章構成であるところも、束の間の古典回帰とも見ることが出来ますが、絶望から勝利を勝ち取るといったベートーヴェン以来の交響曲の伝統とは正反対で、闘争から最後は打ちのめされて破局を迎える夢も希望もない構成(しかも終楽章だけで30分近くかかる!)、カウベル(牧場で牛の首に着ける大きなベル)や巨大ハンマー(これで主人公はノックアウトされる)などが加わる楽器構成などは、やはりマーラー以外の何物でもありません。

山田のコンサートでもう一つ楽しみなのが、恒例となっている演奏前のプレトーク。
指揮者自身が曲の解説を分かり易く、自分たちのエピソードなども交えて40分以上かけて話してくれますので(今回は興が乗って時間超過、途中裏方から「巻き」が入りました)、たまにしかコンサートに行かず、楽曲解説を見る機会も少ない身にとっては有難いところです。

さて演奏はというと、大変充実した素晴らしいものでした。
さすがは若手のなかでも今最も注目されるひとりである山田の面目躍如というところで、とくに後半3,4楽章は申し分なく、演奏する彼らも満足のいく出来であったでしょう。
日フィルは曲の始め、1楽章では弦が今ひとつ集中度を欠き、響きが薄い印象でしたが、次第に指揮に熱が入ってくるとオケにも全体的にガッツが出てきて響きに厚みが増し、聴き応えがするようになりました。
全曲を通して金管、なかでもトランペットの外人さん(オッタビアーノ・クリストーフォリ、客演首席)とトロンボーンの主席は実に気持ち良くバリバリ鳴らしてくれて、こうでないとマーラーは気持ち良く聴けません。

そうそう、例の巨大ハンマー(写真2)は最近の通例どおり2回のお出ましでしたが、ズッドーンといい一撃(二撃?)をかましてくれ、気持ち良く打ちのめされることが出来ました。

沢山のマイクがセッティングされて、恐らくツィクルス全体をライヴで録った全曲録音がいずれ発売されるのでしょう。CDになって、どんな音で聴けるかも楽しみです。
2016年03月30日

 

恒例の会も第8回を迎えました。

まあ、毎回結局同じようなことをやって楽しんでいるのですが、今回はほんのちょっと趣向を変えて、先輩メンバーが自宅から「発掘」してきた古いレコードを、新進気鋭メンバーがかつての名カートリッジのコレクションをごっそり持参。
別に始めからそう企画したわけではないのですが、いつもとは役割が逆のパターンです。

写真に写っているレコードはウェストミンスター盤ですが、米本国盤ではありません。国内の日本ウェストミンスター盤です。
'50年代末~'60年代初頭の盤と思われ、本国オリジナル盤と見まごうばかり、ジャケットの厚紙やレコードのレーベルなど、最初はてっきり米国盤かと思いました(録音は'50年前後)。
当時米ウェストミンスターや仏エラートなどは日本コロムビアの関連会社、日本ウェストミンスターが発売していました。その頃の日本コロムビアは米コロンビアとの専属契約を行っていたからです。
従ってこの盤もプレスは日本コロムビアということになります。

これはやはり当時のモノラル専用針で聴こうということで、NEAT VC-3 で聴くと、ワルター・バリリのヴァイオリンの音色が生々しく響き、当時の音が「解凍」されて当時そのままに聴こえてくるように感じられました。
これこそレコード再生の醍醐味ですね。
2016年03月16日
 
 
 
代理店の方が、独Acoustic Arts 制作のアナログ・レコードのサンプルを持って来てくれました。

アコースティック・アーツはアンプを中心とするハイエンド機を擁するドイツのメーカーで、'09年、オーディオファイル向けにAcoustic Arts Audiophile Recordings レーベルを立ち上げ、今までVol.5 までのCDを発売してきました。

今回初めてアナログ・レコードの形でリリースされるのが、Vol.2 の女性ヴォーカル集です。
LP2枚にたっぷり15曲収録されていますが、すべて異なる歌手によるものでプロデュースも録音も別なのですが、いずれも上質なアコースティック録音で見事に統一感が取れ、オムニバス盤を聴いている気がしません。
スタイルは様々で、あっという間に1枚目を聴き通してしまいました。
そのなかでは一番最初、ノルウェーのBenedicte Torget の歌うSleep While が北欧を感じさせるひんやりと透き通った音楽が、優れた録音とともに最も印象に残りました。

ドイツプレス高音質重量盤2枚組。
少々高いレコードですが、十分楽しめる内容です。

Acoustic Arts Audiophile Recordings UNCOMPRESSED WORLD VOL.2 (2枚組LP/9,800円・税別)
2016年03月05日

 

これは雰囲気のあるヴィンテージ・プレーヤー、米エンパイアの598 です。
エンパイアというと、以前を知る方にはMM/IM型カートリッジのメーカーとして馴染み深い名前でしょう。

598 は'70年頃の製品で、ドイツ製ACモーターで2ピース構造のプラッターをベルト・ドライヴします。
サブ・プレートに取り付けたカートリッジを固定ヘッドシェル型アーム990 に着けるようになっています。このアームはダイナミック・バランス式で、ダイアルで針圧を印加します。見た目はごついですが精度は高く、特別に軽針圧でない限り普通のカートリッジを着けて聴くことが出来ます。

トーレンスの旧型やリン LP12 のように、プラッターとアームを載せたサブシャーシを本体からスプリングで浮かせた構造となっています。

モーターはまだ元気で大変静かに回りますので、錆びたプーリーを磨き、サスペンションを組み直して調整、電源ケーブルとアームケーブルを交換、各接点をきれいにして、アーム再調整、キャビネットの木部を磨くと大変きれいに蘇りました。
付いているオーディオテクニカのカートリッジを通しての音は、プレーヤーの外観どおり、たいへん濃厚な再生で、むせび泣くサックスにはやられました!
2016年02月11日
 
 
 
今年初めての、久し振りの「カートリッジ会」実施となりました。第7回です。
というのは、自主開催メンバーの一人(と言っても全部で2人、+作業員の店主)が就活+大学卒論で忙しく、それどころでなかったというわけ。
が、どちらもようやく終結、ほっと一息、晴れて息抜きが出来ることとなり、早速、「祝!内定&卒業・カートリッジ会」開催の運びとなりました。

今回、先輩メンバーの方がお持ち下さったのは、これは懐かしいDAM(かつての第一家庭電器のオーディオ・メンバーズクラブ)の「マニアを追い越せ大作戦」チラシ・コレクション!(写真上)
10部近くあるでしょうか、すべて当時そのままの状態です。
なかを見ると、有るは有るは、SATIN, entre, FR, GRACE, STAX, Dynavector, Victor, TECHNICS, audio-technica, DENON, SONY, Aurex, SHURE, PICKERING, ADC, STANTON,GRADO, ELAC, ortofon, DECCA, AKG, B&O..などなど。いま改めて見ると宝の山への地図のようです。

今回聴いたカートリッジは、前回の音が耳を離れないというVictor MC-1 を皮切りに、Hifonic MC-R5, EMPIRE 1000Z, 2000Z, ADC TRX-2, PICKERING XV15/750E, DENON DL103SL。
会の試聴曲の定番となったD.ブルーベックのTAKE FIVE の他、今回はバロック音楽のJ.C.バッハ/ヴィオラ協奏曲でも聴き比べを行いました。
2016年02月04日
 

 
昨年2015年の映画興行収益と観客動員数が発表され、微増ではありますが前年を上回って、洋画に限って言えば前年比112%となかなかの結果だそうで、映画好きにとっては嬉しいところです。

思えば以前一時は、街の映画館が軒並み閉館、もはや映画館で映画を見る時代ではないのか、といった報道を度々目にし寂しい思いをしていましたが、これには映画をパッケージするソフトがVHSビデオテープからDVDに代わり、家庭でも格段に優れた画質,音声で観ることが出来るようになったこと、同時にDVDになってソフトの価格も数分の一になってレンタルばかりでなく購入のハードルもはるかに低くなったことなどが影響していました。

でも映画館は絶滅はしませんでした。
確かに駅前にある古い映画館はほとんど無くなりましたが、映画館側も時代に合った生き残りを始めます。今賑わっているシネマコンプレックス、所謂シネコンというやつです。上映室のサイズは小さくなりましたが、ひとつの映画館内に複数の上映室を設け、トータルで利益を稼ぐという方式です。
同時にドルビー社の新しい高音質マルチチャンネル・スピーカーシステムを導入し、音響効果も古い映画館とは比べものにならない進歩を果たしました。
新しくきれいになった館内は席も大きく、ドリンクホルダーも備えて隣の席との間隔もゆったり、前後で段差を設けて前の人の頭が邪魔にならない配慮もされて、格段に居心地が良くなったのも観客の呼び戻しに大きく貢献したでしょう。
しかも今はインターネットでチケット購入、席の指定も出来、簡単に、安心して映画館に向かえます。

但しチケットの値段は基本1,800円と決して安いとは言えないですが、それでも行ってみようかという気になるのは作品の魅力はもちろん、上記のような映画館側の努力によるところも大きいはずです。
つまり自宅とは違って特別な楽しみ方が出来るのであれば、その価値に対してお金を払っても構わないということでしょう。

映画館で観ることが、こうして新たな価値観を生むことになって、一時どうなるのかと思われた映画館にはまた再び賑わいが戻ってきているわけです。

そう考えているうちに、おや、ちょうど同じようなことが他にもあったな、と気が付きました。
そう、アナログ・レコードの人気復帰と状況が似ているのです。
レコードはかけるのは面倒だし、新譜で買おうとするとCDより高価、今では1曲単位で好きな曲だけダウンロードして購入することも出来ますから、便利・安価・気軽なことではCDやネットの敵ではありません。
それでもレコードを聴く人が増えているというのは、CDやネットで簡単・手軽なソフトが出揃ったところで、聴く側もその中身をすっかり把握し、それらに無い十分な満足・感動を得られるもの、つまりレコードに対してなら少し面倒でもお金を出してもいいかな、と考え始めたのでしょう。

これは制作する側でも同じ、一部、心あるアーティストはアナログ・レコードでも新譜を出しているのは、ご存じのとおり。

音楽も映画も、好きなものは大切に観・聴きしていきたいものですね。
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